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BtoBマーケティングにおけるペルソナ戦略| 定義から作成方法、活用事例まで徹底解説

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この記事は約 23 分で読めます。

 BtoBマーケティングでもペルソナ(理想的顧客像)の設定は戦略成功の重要なカギです。近年、「ペルソナはBtoC向けでは?」と思われがちですが、実はBtoBでも顧客理解と施策最適化に欠かせません。本記事では、マーケティング担当者向けにペルソナの基本から応用までを解説します。導入 → ペルソナの定義 → なぜ重要か → BtoB特有の特徴 → 作り方 → 注意点 → 活用事例 → まとめの構成で、専門的かつ実務的な視点も交えて説明します。

ペルソナとは

 

ペルソナとは、自社の製品・サービスを利用する典型的なユーザー像を架空の人物として具体化したものです。氏名・年齢・職業・役職・業務内容から、価値観や課題に至るまで細かく設定し、まるで実在する個人のように描き出します。

マーケティングでよく使われる「ターゲット」と似ていますが、ターゲットが「40代・製造業・経営者」のように属性中心の幅広い層を指すのに対し、ペルソナは「東京都内の製造業A社の経営企画部長、佐藤太郎(45歳)」のように具体的な一人の人物像まで落とし込む点が異なります。ターゲットが大まかな市場セグメントを示すのに対し、ペルソナはその中の象徴的な顧客を演じる仮想の個人なのです。

こうしたペルソナを設定する目的は、社内で共有できる顧客の具体像を作り上げることで、ユーザー視点に立った施策立案を可能にすることです。ペルソナには実際の顧客データやインタビューから得た知見を反映させ、あたかも実在する1人の顧客のように「物語」を持たせます。例えばBtoCであれば、ペルソナには趣味嗜好やライフスタイルまで盛り込み、「土日は子供と公園に出かけるのが習慣の30代男性」など生活者像を描きます。一方BtoBでは後述するように、対象が企業ですから企業情報+担当者情報の両面から設定する必要があります。このようにペルソナはターゲットより詳細かつ臨場感のあるユーザー像であり、マーケティング戦略の羅針盤となる存在です。

Marketing Markerでは、広告やコンテンツに対する反応を、独自のデータベースとWeb上の行動に基づく興味関心データ(=インテントデータ)として可視化。自社に関心のある企業が、いつ・どのチャネルに・どのくらい反応したかを可視化することで、ターゲット企業の属性や関心テーマをもとにペルソナを設定することが可能になります。実態に則したペルソナ設定で、届けたい相手に、最適なタイミングでアプローチできる仕組みを実現します。

詳細はこちら:https://sales-marker.jp/marketing-marker/

ペルソナがマーケティングで重要な理由

ペルソナ設定には手間がかかりますが、BtoBマーケティングにおいても取り組む価値は非常に大きいです。主な理由として次のポイントが挙げられます。

社内で顧客イメージを統一できる

大まかなターゲット像だけで施策を進めると、部署間で「想定しているお客様像」にズレが生じがちです。しかし具体的なペルソナを共有すれば、マーケティング部門と営業部門、さらには開発や経営陣まで共通の顧客像を持つことができます。結果として認識のズレによる手戻りが減り、一貫性のある戦略展開が可能になります。特にBtoBでは製品開発から営業提案まで複数部署が関与するため、ペルソナによる共通認識づくりは重要です。

顧客のニーズを深く理解できる

 ペルソナを作成する過程で、市場調査やユーザーへのヒアリングを行うことで顧客の課題や真のニーズが浮き彫りになります。架空とはいえ根拠あるデータから作られたペルソナは、実在の顧客像を投影しています。ペルソナの目線で「何に困っているのか」「どんな情報を欲しているのか」を考えることで、ユーザーに寄り添った製品改良やコンテンツ企画がしやすくなるのです。BtoB商談においても、ペルソナの抱える課題を営業提案に反映させれば、より的を射たアプローチが可能になります。

施策の一貫性と精度が向上する

ペルソナを起点にすると、的外れな施策の削減につながります。例えば「このペルソナならどのチャネルで情報収集するか?」「どんなメッセージに響くか?」といった判断基準が明確になり、効果的なマーケティング施策に絞り込めます。無闇に手を広げるのではなく、ペルソナが反応しやすい媒体やコンテンツにリソースを集中できるため、結果的に時間やコストの削減にも寄与します。また営業現場でも、ペルソナを参考にしたリードナーチャリング(見込み顧客育成)や提案活動を行うことで、商談化率の向上やクロージングまでの期間短縮が期待できます。

競合との差別化ポイントが見える

ペルソナを通じて顧客視点で自社を分析すると、「顧客が真に求めている価値」に焦点が当たり、競合と比べた自社の強み・弱みがクリアになります。例えばペルソナの課題リストを洗い出すことで、自社製品がどの課題解決に優れているかが浮き彫りになり、それが競争優位のメッセージとなります。ペルソナ中心に戦略を組み立てることで、自社ならではの訴求ポイントや提供価値(バリュープロポジション)が明確化し、マーケティング全体の方向性に芯が通るのです。

 さらに、ペルソナはマーケティングと営業の連携ツールとしても有用です。BtoBではマーケ部門が創出したリードを営業がフォローするケースが多いため、両者が同じ顧客観を持つことが成果につながります。例えば、マーケが設定したペルソナ資料を営業チームと共有し、「ペルソナAにはこの課題訴求を重視する」「ペルソナBにはこの業界動向の話題から入る」などアプローチ方法をすり合わせておけば、マーケ施策から営業提案まで一貫した顧客体験を提供できます。このようにペルソナは社内コミュニケーションの共通言語となり、組織全体で顧客志向を徹底するのに役立ちます。

BtoBマーケティングにおけるペルソナの特徴

BtoBマーケティングでペルソナを考える際には、BtoCとは異なるいくつかの特有のポイントを押さえておく必要があります。BtoBならではの購買プロセスの違いがペルソナ設計にも影響を与えるためです。主な特徴を見ていきましょう。

①意思決定者・関与者が複数いる

 BtoB商材の購入判断は個人ではなく組織で行われます。現場担当者が独断で導入を決めることは稀で、上長の承認や他部署(調達部門・経営層など)の関与が必要です。そのため購買プロセスには複数のステークホルダー(利害関係者)が登場します。具体的には、「情報収集を行う担当者」「予算・決裁権を持つ上位者」「実際のユーザーとなる現場メンバー」などです。

したがってBtoBのペルソナ設定では、一人の理想顧客像では不十分で、役割ごとに複数の人物ペルソナを用意する必要があります。例えば製造業向けシステムを売り込む場合、「工場現場のシステム管理者(導入提案の主担当)」「情報システム部長(社内承認の決裁者)」「工場長(最終的な利益責任者)」など、それぞれの立場に対応したペルソナを設定しておくと効果的です。ペルソナごとに関心事や痛点も異なるため、アプローチ方法も変える必要があります。

②購買決定までに時間がかかる

関与する人数が多い分、BtoBでは検討から意思決定までのリードタイムが長くなる傾向があります。複数人の合意形成に時間がかかり、また導入の予算確保や稟議(承認プロセス)などで数ヶ月〜1年以上要することも珍しくありません。したがってペルソナも、この長期的な顧客旅路(カスタマージャーニー)を踏まえて作成する必要があります。

例えば「まず担当者レベルで問題意識を醸成→部門長に提案→経営層の承認取得」といった段階ごとに、ペルソナの情報収集行動や感じる不安・期待を想定します。長期戦を見据えて、各フェーズでペルソナに寄り添ったコンテンツ提供やナーチャリング計画を立てることが求められます。

③意思決定の判断基準が論理的・合理的

BtoCでは感情や直感が購買を後押しするケース(「なんとなく有名だから買う」「デザインが好きだから選ぶ」等)もありますが、BtoBでは基本的に経済合理性や論理が重視されます。企業として費用対効果を検討し、リスクを評価し、複数の候補から最善策を選ぶプロセスになります。

そのためペルソナに織り込むべき要素も、「個人的な趣味嗜好」より「業務上の課題とKPI」「期待するROI(投資対効果)」といった項目が重要度を増します。例えば決裁者ペルソナであれば「予算内で収まるか」「導入による生産性向上幅はどれくらいか」といった合理的関心事を持つでしょう。一方ユーザーペルソナ(実務担当者)なら「操作が簡単か」「自分の業務負担が減るか」といった実務目線のメリットを気にします。このように企業目線のニーズにフォーカスしてペルソナを設計する必要がある点が、BtoCとの大きな違いです。

④「企業としての課題」を考慮する

 BtoBでは顧客は個人ではなく法人(組織)であるため、その企業全体が抱える課題や業界環境もペルソナに組み込むことが大切です。個々の担当者の属性だけでなく、法人ペルソナ(企業像)をまず描き、その上でそこに所属する個人ペルソナを設定する二層構造で考えます。

法人ペルソナには業種・業界動向、会社規模、事業課題、組織構造、社風などを記載し、「どういう企業を対象にしているのか」を明確にします。例えば「国内〇〇業界でトップクラスの中堅メーカー、従業員500名規模、保守的な社風、近年はDXに関心」などです。こうした企業背景があって初めて、その中の担当者個人の行動や意思決定も理解できます。BtoCのように一人の生活者を描くだけでなく、企業という器の中で個人がどんな役割を担い、どんな制約や目標を持っているかまで踏み込むのがBtoBペルソナの特徴です。

BtoBペルソナの作り方(ステップとポイント)

それでは、実際にBtoBマーケティング向けのペルソナを作成する手順を解説します。ペルソナ作成は最初は労力がかかりますが、以下のステップに沿って進めれば抜け漏れなく進行できます。自社の状況に合わせて調整しつつ、チームで取り組んでみましょう。

ステップ1:自社の強み・提供価値を明確にする(自社分析)

ペルソナ設定に入る前に、まず「自社は誰にどんな価値を提供できるのか」を整理します。これはマーケティング戦略の土台となる作業で、ペルソナを的確に定める指針となります。具体的には自社商品・サービスの特徴や優位点を洗い出し、想定顧客の課題と突き合わせてみます。フレームワークを使うなら、3C分析(自社・競合・顧客の分析)で市場における自社ポジショニングを確認したり、SWOT分析で自社の強み弱みと機会脅威を整理するとよいでしょう。

例えば「競合X社は低価格戦略だが当社はサポート品質で勝負」「当社サービスは製造業の在庫管理の○○問題を解決できる」といったポイントです。このバリュープロポジション(提供価値)を明確にすることで、「誰をペルソナに設定すべきか」の方向性が見えてきます。

ステップ2:既存顧客データからターゲット企業を絞り込む

 次に、具体的なペルソナ候補となるターゲットセグメントを決定します。これは既存顧客や過去の商談データを活用するのが近道です。自社と相性の良い顧客の傾向を探り、共通点のある企業像を描きます。

例えば、過去の受注企業の業種・規模を分析したり、問い合わせをくれた見込み企業の抱えていた課題を一覧化するなどです。これにより「当社サービスが価値を提供しやすい業界や企業規模」が浮かび上がり、ターゲットとなる企業像をセグメントできます。また必要に応じて、競合他社が狙っている顧客層や市場の統計データも参考にしましょう。「従業員100~300名規模の製造業」であれば導入ハードルが低そうだ、など仮説を立てて対象を絞ります。ここまでで、「どの企業群にアプローチするか」が定まります。

Marketing Markerでは、広告やコンテンツに対する反応を、独自のデータベースとWeb上の行動に基づく興味関心データ(=インテントデータ)として可視化。自社に関心のあるターゲット企業が、いつ・どのチャネルに・どのくらい反応したかを可視化することで、ターゲット企業の属性や関心テーマをもとにペルソナの設定をサポートします。実態に則したペルソナ設定で、どの企業群にアプローチするかを決定し、最適なタイミングでアプローチできる仕組みを実現します。

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ステップ3:情報収集(定量データ+定性インサイト)

ターゲットが定まったら、その企業群に属する顧客について可能な限り情報を収集します。具体的には二種類の情報ソースを組み合わせると効果的です。

まず社内に蓄積された定量データ:顧客の業種、企業規模、導入製品、取引履歴、Webアクセス解析データなど、数値で捉えられる情報です。

次に定性情報:顧客担当者へのインタビュー結果、営業担当から聞き取った現場の声、アンケートで寄せられた意見など、人の感じ方や背景に関する生の情報です。

例えば「◯◯業界では○○に課題を感じる傾向がある」「IT担当者はセキュリティに敏感だが、現場ユーザーは使い勝手を重視している」等の洞察です。これらを総合してペルソナ像に肉付けしていきます。可能であれば実際の顧客や見込み客へのヒアリングを実施しましょう。直接会話することで、データだけでは見えない本音や意外なニーズを発見でき、ペルソナの信憑性が高まります。

ヒアリングの際は「現在最も優先して解決したい課題は何ですか?」「製品選定で重視する点は?」など具体的に質問し、深掘りしていくのがコツです。また、営業やカスタマーサクセスなど顧客と日々接している部門の声も貴重な情報源です。マーケ担当者一人で考え込まず、社内の関係者を巻き込んでデータと知見を集めましょう。

ステップ4:法人ペルソナ(企業像)の設定

いよいよペルソナを具体化していきます。まずは企業ペルソナから設定しましょう。ステップ2で絞り込んだターゲット企業群を代表する架空の企業を1社作るイメージです。その企業の基本属性(ファーモグラフィック情報)を整理します。例えば次のような項目です。

  • 業種・業界: (例)自動車部品の製造業

  • 事業内容・提供サービス: (例)内装部品の製造販売、アフターマーケット事業も展開

  • 従業員規模: (例)全社300名(うち本社100名・工場200名)

  • 売上規模: (例)年商50億円規模

  • 所在地・市場ポジション: (例)本社は愛知県、トヨタ系列向け部品供給で業界シェアトップクラス

  • 企業課題: (例)人手不足による生産性停滞、新技術対応への投資課題

  • 社風・意思決定の特徴: (例)現場主義で保守的、IT投資の意思決定は本社管理部門が主導

このように企業としての顔を描きます。BtoBではこの法人像がペルソナ設定の土台になります。なぜなら提供するソリューションの価値検討は、その企業全体の状況や課題感に大きく左右されるからです。例えば上記のような「人手不足が課題のメーカー」という法人ペルソナなら、「省人化につながる提案」が刺さりやすいでしょうし、保守的な社風なら「実績データに基づく安心感あるメッセージ」が有効かもしれません。この段階でターゲット企業の輪郭をはっきりさせておくことで、次の人物ペルソナも描きやすくなります。

ステップ5:人物ペルソナ(担当者像)の設定

 続いて、その法人ペルソナ内で自社商材に関わる担当者個人のペルソナを設定します。BtoBでは前述のとおり関与者が複数いるため、主要な役割ごとに複数の人物ペルソナを用意すると理想的です。ただ最初から作りすぎると運用が大変なので、まずはプライマリーペルソナ(最重要な1〜2名)に絞って作成するとよいでしょう。一般的には「最初に情報収集を行う実務担当者」と「最終決裁者(上長や経営層)」の2種類が基本になります。それぞれについて、以下のような項目を設定します。

  • 氏名・属性: 架空の名前、年齢、性別、役職(例:「佐藤太郎、45歳、経営企画部長」)

  • 経歴・スキル: その人物の職務経歴や専門知識(例:新卒で経理配属、一貫して管理畑を歩む)

  • 担当業務とKPI: 普段どんな仕事を担い、評価指標は何か(例:経営企画部長=全社の生産性向上プロジェクト統括、KPIは間接部門コスト削減率)

  • 抱えている課題・ニーズ: 業務上の痛点や解決したい問題(例:「各部門のデータを集約するのに時間がかかって困っている」「属人的な業務を改善したい」)

  • 意思決定権の有無: 購入を承認できる立場かどうか(例:部長職で予算権限は~○○万円まで所持)

  • 情報収集行動: 普段どんな媒体から情報を得ているか(例:「業界専門誌と日経新聞は毎日チェック」「IT系展示会には年2回参加」)

  • 価値観・性格: 業務スタイルや意思決定の傾向(例:「データ重視で論理的。新しい技術にも興味はあるがリスクにも慎重」)

  • 人間関係: 社内での立ち位置や影響力(例:「社長の信頼が厚く提案は通りやすい」「現場からは多少距離がある」)


図制作指示:BtoB向けペルソナシートのフォーマット例。左上に企業プロフィール(法人ペルソナ)、右下に担当者の詳細(人物ペルソナ)を記入し、一人の架空顧客像を設計する。社名や顔写真を入れて具体性を持たせるのがポイント。実際の自社状況に合わせて項目は自由にカスタマイズ可能。

上記のように、企業情報と個人情報の両面を組み合わせて「会社X社に勤めるYさん」というペルソナを完成させます。BtoBの場合、特に重要なのは「担当者の役職・権限」「担当業務上の課題」の部分です。これらは購買プロセスに直結する要素であり、マーケティング施策を考える際の軸になります。

例えば「課題」が明確になればコンテンツで狙うテーマ(検索クエリ対策など)が定まり、「所属部署・役職」が分かればイベント出展や広告のチャネル選定にも役立ちます。またペルソナを作成したら、営業担当者など現場の声をもとに妥当性をチェックすることも大切です。 「この人物像、現実のお客様にいそうか?」と営業にレビューしてもらい、違和感があれば修正します。机上の空論で終わらせず、現場感覚を反映した生きたペルソナに仕上げるのがポイントです。

ステップ6:ペルソナの社内共有と活用

 ペルソナが完成したら、チーム全員で共有しマーケティングプロセスに組み込みます。 例えば定例会議でペルソナシートを参照しながら企画を検討したり、新しいコンテンツを作る際に「この内容はペルソナAに刺さるか?」とチェックするなどです。営業現場でも提案資料にペルソナのニーズを反映させることで、より的確なプレゼンができます。

また、ペルソナはカスタマージャーニーマップなど他のマーケティングフレームワークと連携させると一層効果的です。ペルソナを縦軸(人物像)に、購買プロセスの段階を横軸に取ったカスタマージャーニーマップを作成すれば、「いつ・どのタイミングで・何を提供すべきか」が可視化できます。これにより施策が具体化し、各接点での最適なアプローチ(適切なコンテンツや媒体の選択)を検討しやすくなるでしょう。ペルソナは作って終わりではなく、戦略策定と実行の場で生きてこそ価値を発揮します。

ペルソナ作成時の注意点(よくある失敗と対策)

ペルソナを効果的に活用するには、作成段階でいくつかの注意すべきポイントがあります。ありがちな失敗パターンと、その防止策を確認しましょう。

 

誤り①:データではなく思い込みで作ってしまう

 せっかく詳細なペルソナを作っても、それが社内の想像だけで組み立てられた理想像では意味がありません。根拠のないペルソナは実態と乖離してしまい、そこから考えた施策も的外れになります。特に社内だけでブレインストーミングして作ったペルソナは、現実の顧客像とかけ離れがちです。この失敗を防ぐには、必ずデータや事実に基づいて設定することです。

インタビュー結果や既存顧客の属性分析などを十分行い、エビデンスに裏付けられた項目だけを盛り込みましょう。情報が不足する場合は、無理に憶測で埋めず「仮説」と明記しておいて後から検証するくらいの慎重さが必要です。データドリブンでペルソナを構築すれば、施策立案の精度も自ずと高まります。

誤り②:ペルソナを一種類に絞りすぎる/増やしすぎる

BtoBでは前述のように複数ペルソナが必要な場合がありますが、逆に闇雲に作りすぎるのも問題です。ペルソナが多すぎると運用が煩雑になり、結局社内で使われなくなります。

一方、一種類のペルソナだけで全ユーザーを代表させようとすると、実際にはカバーしきれないニーズが出てきます。失敗例として、マーケティングチームが熱心に詳細なペルソナを5人も6人も作り込んだものの、営業から「細かすぎて覚えられない」と不評で活用されなかったケースがあります。また逆に一人のペルソナ像に固執した結果、幅広い顧客層のニーズを捉え損ねた例もあります。対策として、自社にとって最重要な顧客パターンから優先してペルソナ化し、必要十分な人数にとどめることが肝心です。

例えば「プライマリー(主要)ペルソナは2パターン、セカンダリー(補助)を2パターン」のように決め、まず主要ペルソナに注力して施策を展開します。そして余裕があれば徐々に他のペルソナにも着手すると良いでしょう。また、どうしても対象外の層がある場合はアンチペルソナ(狙わない顧客像)として定義しておく手もあります。「問い合わせは来るが受注率が低い業種」などをアンチペルソナとして明示することで、逆にリソース配分の優先度が明確になります。

誤り③:ペルソナの優先順位があいまい

複数ペルソナを運用する際にありがちなのが、どのペルソナに注力すべきか明確でない状態です。すべての想定顧客を網羅しようとすると、それぞれに合わせた施策が必要になりリソースも分散してしまいます。対策として、ペルソナごとにビジネスへの貢献度を評価し優先順位を付けましょう。

例えば市場規模が大きいセグメントのペルソナ、受注率が高いペルソナ、将来性のあるターゲット層のペルソナ、といった観点で重要度を判断します。特にプライマリーペルソナは1〜2パターンに絞り、メインターゲットとして集中します。「この製品ではまず○○部門長ペルソナに響く施策を最重視しよう」など、焦点を絞ることでメッセージやコンテンツも明瞭になり、効果検証もしやすくなります。逆に優先度の低いペルソナには最低限のリソース配分に留め、主要顧客像への訴求にブレないよう意識しましょう。

誤り④:作ったペルソナが社内に浸透せず形骸化する

 ペルソナ作成プロジェクトだけが先行し、現場がそれを使いこなせないまま放置されるケースも見られます。例えば経営層や営業チームがペルソナの存在を知らず、従来通りの勘と経験で施策を進めてしまう、といった状況です。これではせっかくのペルソナも活きません。

対策はシンプルで、ペルソナを組織全体で共有し活用するルールづくりです。具体的には、ペルソナシートを社内ポータルに掲載して誰でも見られるようにする、定期ミーティングでペルソナに立ち返って議論する、営業資料やマニュアルにペルソナを載せる等が考えられます。

特に新しい施策の企画時やコンテンツ制作時には「ペルソナチェック」を必須プロセスに組み込み、「この施策はペルソナの課題を解決するものか?」と問いを立てる習慣をつけましょう。また、経営陣にもペルソナの有用性を説明して巻き込むことで、組織ぐるみで顧客中心の思考が定着します。ペルソナは全員で使ってこそ価値が最大化することを肝に銘じましょう。

誤り⑤:情報を詰め込みすぎてペルソナがぼやける

 ペルソナにはできるだけ詳細な情報を載せたいところですが、闇雲に詰め込みすぎると却って焦点が定まらなくなります。あれもこれもと要素を盛り込むと、「結局このペルソナの要点は何だっけ?」となり、現場で参照しにくくなるのです。そこで情報量のコントロールが大切です。ペルソナに含める項目は、マーケティングや営業施策を考える上で必要不可欠なものだけに絞ります。

BtoBであれば、「業界・企業規模・部門・役職・課題」など施策直結の要素は重視しつつ、逆に個人的な趣味趣向など意思決定に影響しにくい情報は思い切って省くことも検討しましょう。情報をそぎ落とすことでペルソナの輪郭がはっきりし、社内でも共有しやすくなります。

誤り⑥:ペルソナを作りっぱなしで更新しない

 市場環境や顧客のニーズは常に変化します。にもかかわらずペルソナを一度作ったきり見直さないのは危険です。例えば数年前に設定したペルソナを、その後ターゲット層が変わったにもかかわらず使い続けていると、現状にそぐわない戦略を立ててしまう恐れがあります。

ペルソナは生き物と心得て、定期的なブラッシュアップを実施しましょう。目安としては半年〜1年に一度は見直しの場を設け、最新の顧客データや市場トレンドを反映させるようにします。例えば新規顧客が増えてきた業界があれば法人ペルソナの業種を追加する、コロナ禍で顧客の情報収集手段がオンライン化したならペルソナの行動パターンに反映する、といった具合です。

また大きな環境変化(技術革新や法規制変更など)があった場合や、新製品ローンチ・サービス刷新のタイミングでもペルソナの見直しを検討してください。常に最新の姿にアップデートされたペルソナを維持することで、刻々と変わる顧客ニーズに対応した柔軟な戦略策定が可能になります。

ペルソナ活用の具体的事例

最後に、BtoBマーケティングでペルソナを活用した具体的な事例シナリオを紹介します。架空のケースですが、ペルソナ戦略がどのように実務で役立つかのイメージを掴んでください。

事例:ITソリューション企業A社におけるペルソナマーケティング

 A社は製造業向けのクラウド在庫管理システムを提供するBtoB企業です。マーケティング担当の田中さんは、自社のリード獲得が伸び悩んでいる原因を探る中で、「顧客像が曖昧なまま手当たり次第に施策を打っていた」ことに気づきました。そこでペルソナマーケティングを導入し、主要顧客の姿を明確化することにしました。

まず田中さんは、営業やサポート部門と合同でワークショップを実施。過去に受注した製造業クライアントの共通点を洗い出しました。その結果、「従業員300名規模前後の地方製造メーカー」が多く、「IT専任者が少なく現場の在庫管理に課題を抱えている」という傾向が見えてきました。そこで法人ペルソナとして「地方中堅メーカーX社(従業員250名、手作業の在庫管理で効率化課題)」を設定しました。

次に、このX社の中でシステム導入に関わりそうな人物として2名の人物ペルソナを作成しました。一人目は「情報システム担当の課長:佐藤さん(40歳男性)」です。佐藤さんは社内SE的立場で、各部門から上がってくる業務効率化ニーズに応えるのが役割です。しかし専門チームはおらず兼任でIT管理をしており、「全社の在庫状況をリアルタイムで把握できず困っている」ことがヒアリングで判明しました。情報収集源はメーカー向け技術セミナーや業界誌で、ITベンダーからのホワイトペーパーもダウンロードして読む勉強熱心な人物像です。

二人目は「製造部門のマネージャー:高橋さん(50歳男性)」です。高橋さんは現場叩き上げで工場管理に長年携わっており、在庫管理の現状にも精通しています。現場視点では「在庫データの入力作業が煩雑で現場負荷になっている」ことが課題でしたが、一方で新しいITシステム導入には慎重で、「本当に現場で使いこなせるのか?投資に見合う効果があるのか?」と懐疑的な面もあります。決裁権はありませんが、導入の是非について経営層に強い影響力を持つ立場です。

A社はこの2名のペルソナをベースにマーケティング戦略を練り直しました。具体的な施策として、まず佐藤さん(情シス課長)向けに技術的なホワイトペーパーを用意しました。内容は「在庫管理システム導入で得られるROIシミュレーション」や「他社事例での現場効率化の定量効果」といった論理的エビデンス重視の資料です。これはペルソナの情報収集習慣(ホワイトペーパーを読む)に合わせ、Webサイトの資料ダウンロードとして提供しました。またセミナー広告も業界専門メディアに出稿し、佐藤さんが日頃見るチャネルに絞り込みました。

一方、高橋さん(製造現場マネージャー)向けには現場目線のコンテンツを用意。例えば「現場スタッフでも使いやすいシステム画面紹介動画」や「導入企業の現場担当者インタビュー記事」を制作しました。高橋さんはIT専門メディアより業界紙や現場交流会に関心が強いというペルソナ設定だったため、メールマガジンや展示会でこれらコンテンツを直接訴求する戦略を取りました。さらに、高橋さんが懸念する「現場で使いこなせるか」という点に応えるため、無料トライアルの提案や導入研修サポート体制を前面に押し出した営業資料も準備しました。

営業チームにもペルソナを共有した結果、商談時の提案アプローチも変化しました。以前は画一的にシステム機能をアピールしていたところを、相手が佐藤さんタイプなら「ROI・システム連携など技術メリット」を強調し、高橋さんタイプなら「現場作業が○時間短縮できる具体例」を示すなど、ペルソナに応じた訴求ポイントを押さえた提案ができるようになりました。これにより営業からは「お客様の反応が明らかに良くなった」「ニーズを言い当てられたと感心された」といったフィードバックがありました。

ペルソナ導入から半年後、A社の成果は明確に現れました。Webからのホワイトペーパーダウンロード数はターゲット業種のリードを中心に増加し、展示会では高橋さんのような現場マネージャー層の見込み客リストが獲得できました。なにより、マーケと営業が一丸となって理想顧客に向き合う体制ができたことで、リード転換率や提案成功率が向上しました。このケースでは、ペルソナ設定を通じて社内の共通言語が生まれ、マーケティング施策から営業活動までシームレスにつながった好例と言えるでしょう。

まとめ – ペルソナ戦略でマーケティングを最適化

BtoBマーケティングにおいて、ペルソナの設定は一見遠回りなようでいて戦略の要となる重要なプロセスです。誰に向けた施策か不明確なままではメッセージもぼやけ、成果につながりにくくなってしまいます。逆に、リアルで具体的なペルソナを社内で共有できれば、企画ブレストから施策実行まで一貫して顧客視点を維持でき、結果として効率的かつ効果的なマーケティングが実現します。

最後に、本記事のポイントを振り返ります。ペルソナを活用する際には以下を心がけてください。


  1. データに基づく設計: 既存顧客のデータやインタビューなど事実ベースでペルソナを描き、思い込みを排除する。

  2. 定期的なアップデート: 市場や顧客の変化を取り入れるため、ペルソナは半年〜年に一度見直しブラッシュアップする。

  3. 社内での徹底共有: ペルソナを部署横断で共有し、施策検討時や営業現場で常に参照する運用ルールを設ける。

  4. 情報の取捨選択: ペルソナ項目は企業情報と担当者情報の両面を網羅しつつ、盛り込みすぎず要点を絞った内容にする。

ペルソナは決して絵に描いた餅ではなく、正しく作り上げ使いこなせばマーケティングROIを高める強力な武器になります。BtoBマーケティング特有の複雑な購買構造においても、ペルソナを軸に据えることで関係者全員のベクトルを合わせ、顧客に響く戦略を一貫して展開できるのです。自社のマーケティング課題に悩んでいる方は、ぜひペルソナ設計と活用に改めて取り組んでみてください。

Marketing Markerでは、広告やコンテンツに対する反応を、独自のデータベースとWeb上の行動に基づく興味関心データ(=インテントデータ)として可視化。自社に関心のある企業が、いつ・どのチャネルに・どのくらい反応したかを可視化することで、ターゲット企業の属性や関心テーマをもとにペルソナを設定することが可能になります。実態に則したペルソナ設定で、届けたい相手に、最適なタイミングでアプローチできる仕組みを実現します。

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