“今ほしい”に応え、営業を進化させる「インテントセールス」
インテントセールスとは、顧客の“いま”を捉えて最適な接点を生み出すことで成果を最大化する“成長モデル”です。
そのシグナルは、Web検索やコンテンツ閲覧などのアクションから、商談の場で語られる懸念事項や論点に至るまで多岐にわたります。
顧客は営業に会う前から静かに検討を進め、社内では複数の関係者が別々の判断軸で意思決定を行うため、営業が把握できる情報はごく一部に限られます。インテントセールスは、この分断された検討の流れを「何を調べ、何を比較し、どこで判断が変わったのか」という意図の連続として捉え直し、誰が担当しても成果が出せる再現性と、事業として積み上がる成長の循環をつくります。
インテントセールスが注目される理由
インテントセールスが求められる背景には、営業の難易度を押し上げている 3つの構造変化があります。


構造変化 1:顧客の検討行動が“営業の外側”へ
顧客は営業と会う前に、課題の明確化・比較・調査を静かに進めています。商談の場で語られる内容は「表面」だけで、その裏には営業の視界に入らない動きが大量に存在します。このギャップが、読み違いや提案のズレにつながります。
構造変化 2:意思決定が多層化し、同じ企業の中で“複数の検討ストーリー”が走る
情シス・現場・経営・購買など、役割が違う関係者がそれぞれ独自に情報収集し、異なる評価軸で検討を進めています。その結果、営業が見ている話と、企業内部で起きている現実の検討プロセスにズレが生じます。
構造変化 3:営業が使える情報が根本的に足りず、“属人化”が加速している
ツールは増えましたが、顧客理解は点在したまま。勝ちパターンが共有されず、「トップ営業だけが売れ続ける」状態が常態化しています。原因は、必要な情報が見えていないため、判断に再現性が生まれないことです。
顧客理解を深めるための、3つのインテント
インテントセールスの核となるのが、顧客の興味関心を捉える3種のインテントです。
これは単なる分類ではなく、分断されがちな検討プロセスを“つながった理解”に戻すためのフレームです。それぞれが補完し合い、3つがそろうことで、顧客の判断の背景や優先度の変化が立体的に見えるようになります。


Search Intent(検索インテント)|顧客はまず調べる
顧客は、検討のどのタイミングでも「知りたい」「確かめたい」と思った瞬間、自分で検索し、気になるページを読み、情報を取りにいきます。これは検討初期に限らず、商談前でも、商談中でも、社内での議論の途中でも起こります。検索インテントが意味しているのは、「顧客が何を気にしていて、どこに引っかかっていて、何を確かめようとしているのか」 という、顧客の “その瞬間の関心・不安・疑問” が行動として現れた状態です。
Search Intent は、顧客が “本当に気になっていることが何か” を行動で示す、もっとも分かりやすいシグナルです。
Action Intent(アクションインテント)|意思決定の軸は、“比較と深掘り”の過程で固まる
顧客は、気になるテーマが見つかると、「これは本当に自社に合うのか?」「他とどう違うのか?」を確かめるために、事例を読み、比較し、FAQを探し、導入条件を調べ始めます。この“深掘り”の行動には、顧客が何を重要視し、どんな判断軸で評価しようとしているのかが正確に表れます。
アクションインテントは、顧客が“どう決めるつもりなのか”がにじみ出る行動です。何を深掘りしたかを見るだけで、商談前から意思決定の方向性が見え始めます。
Communication Intent(コミュニケーションインテント)|対話の“反応の変化”にこそ、本当の意図が宿る
商談や打ち合わせでは、顧客が「どこに納得し、どこに引っかかっているか」が、言葉だけでなく反応として表れます。質問の角度、沈黙の長さ、前回と違う視線の動き、急にメモを取り始める瞬間——こうした“その場の反応”には、顧客の意思の変化が鮮明に出ます。
コミュニケーションインテントは、顧客の“判断の揺れ”や“次に起こす行動”を読み解くためのシグナルです。行動文脈と重ねることで、商談が“ただの会話”ではなく「意思決定のどこが動いたか」を捉えられるようになります。
営業の成果は、“インテント × AIエージェント”で最大化する
営業活動の成果を高めるうえで最初に向き合うべきは、商談を安定的に生み出す仕組みをつくることです。その実現に最も適しているのが、“インテント × AIエージェント”という考え方です。
・必要としている顧客を見つける
・最適なアプローチを自動で実行する
・実行と学習を通じて精度を高め続ける
これらを仕組みとして組み込めるかどうかが、営業成果に大きな差を生みます。
ここでは、このあと紹介する「3つのレイヤー」の土台となる、インテントセールスの基本構造を整理します。
インテントセールス実践 5つのステップ
インテントセールスの核心は、「いま必要としている企業」との最適な接点を生み出すこと──
ただ、実践の現場では成果のバラつきが生まれやすく、その要因は“やり方”ではなく“仕組み化”の不足にあります。
インテントデータとAIを組み合わせ、誰でも再現できるプロセスとして設計することで、インテントセールスは初めて安定した成果を生み出す営業基盤になります。
AIエージェント時代の到来にあわせて、インテントセールスは5つのステップへと再定義されました。 従来の4ステップに「分析と改善」が加わり、分析や学習を通じて精度を高める循環を組み込み、持続的に成果を生み出す仕組みとして体系化されました。
変化し続ける顧客ニーズに応えるためには、この5つのステップを探究心を持って実践し、常に進化させていくことが求められます。


「再現性で伸びる組織」に変える、インテントセールスの3つのレイヤー
前のセクションでは、インテントセールスを実践するための「5つのステップ」を紹介しました。
これらは“どう実行するか(How)”のプロセスですが、インテントセールスの価値はそれだけにとどまりません。
5つのステップを組織として実装することで、営業活動そのものが“積み上がる成果”へと変わり、組織全体の成長構造が生まれます。
その全体像を整理したものが、次の 3つのレイヤー です。
インテントセールスは、短期の商談創出から、中期の組織学習、長期の事業成長までを一気通貫でつなぐ “成長モデル” として機能します。


Revenue Layer|まず売れる組織になる(短期:成果の再現性)
インテントによって「誰に・いつ・何を届けるべきか」が明確になるため、動いている顧客だけに集中でき、商談数と成約率が安定して伸びます。これは“効率化”ではなく、成果の再現性が高い営業組織になるための土台です。
・「見込み薄」へのアプローチが減り、商談の質が上がる
・提案がズレなくなり、成約率が上がる
・どのメンバーが担当しても数字が安定する
短期成果が積み上がり、“売れる組織の仕組み”が出来上がるフェーズです。
Learning Layer|勝ち方がそろい、組織が強くなる(中期:組織学習)
3つのインテントがつながると、「なぜ勝ったのか」「なぜ負けたのか」が明確になります。これは個人の感覚ではなく、行動データ × 商談データ × 反応データ から読み取れる“根拠”です。その結果、組織全体で勝ち方がそろうという中期的な飛躍が生まれます。
・Win/Loseの理由が言語化され、属人性が減る
・新人の立ち上がりが早くなり、離職率も低下
・マーケ・営業・CSが共通の顧客理解を持てる
このフェーズは、単なる営業改善ではなく、“組織が学習する仕組み”が構築される段階です。
Strategy Layer|事業が伸び続ける基盤がそろう(長期:成長戦略)
インテントによって得られた深い顧客理解は、営業だけでなくマーケティング、プロダクト、CSまで横断して活用できます。顧客が「なぜ導入し、どこに価値を感じ、どこでつまずき、何を求めているのか」が一気通貫で整理されるため、企業全体の意思決定と戦略が正確になります。
・顧客理解をもとにしたプロダクト改善や新機能開発
・マーケ施策の精度向上(ターゲットの明確化)
・継続率・アップセル率の向上でLTVが伸びる
・管理職や経営が“判断しやすい組織”になる
ここまで来ると、営業の成果は“単発の売上”ではなく、事業全体を強くする“資産”として積み上がります。
営業の未来は、“理解の精度”が決める
営業はいま、かつてないほど多くの情報と、多様な顧客の判断軸を相手にする時代になりました。その分だけ、顧客が何を考え、何を確かめ、どこで迷っているのかが見えにくくなっています。だからこそ必要なのは、“多様な判断の流れを正しく理解するための考え方”です。
インテントセールスは、顧客の検索・行動・対話に現れるインテントを手がかりに、検討の流れを前後のつながりとして捉え、営業活動を「読み当てるもの」から「理解に基づいて動けるもの」へ変えていきます。その結果、営業はより確度の高い活動ができ、組織は学習しながら強くなり、事業は継続的に伸びていくサイクルに入ります。
インテントセールスは、短期の成果だけでなく、組織と事業の未来まで見据えた “成長モデル” です。
変化の大きい時代だからこそ、顧客の意図を正しく理解しながら前に進むことが、最も確実で、最も前向きな成長の道筋になります。
これからの営業組織に必要なのは、大きく変えることではなく「正しく理解して進む仕組み」を持つこと。
インテントセールスは、そのための新しいスタンダードです。
