2025.06.13
応募が来ないのはなぜ?SNS採用の落とし穴とインテント活用

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SNS採用、なぜ応募が来ないのか?
近年、多くの人や企業がSNSを利用するようになり、SNSを活用した採用活動(ソーシャルリクルーティング)が注目されています。さまざまな企業がX(旧Twitter)やFacebook、LinkedInなどのSNSプラットフォームで会社の雰囲気や社員の声、働き方を発信し、フォロワーの獲得や採用ブランディングに取り組んでいます。
さらに、ユーザーに直接DMを送り面談に誘導するといった形で採用に活用する企業も増加しています。しかし、「SNSで発信を続けているのに求職者からの応募が来ない」「DMを送っても反応が薄い」と感じている採用担当者も少なくないのではないでしょうか。
SNS採用がうまく機能しない原因
・発信の目的と求職者の期待にギャップがある
企業側は「認知を高めたい」「自社の魅力を伝えたい」という思いで情報を発信しますが、求職者は「転職先としてのリアリティ」「自分に合う職場か」という観点でSNSの情報を見ています。表面的な「楽しそう」「自由な社風」といったイメージだけでは、実際の応募にはつながりません。
また、SNSのフォロワーは必ずしも転職を検討している層とは限りません。興味本位や単にその企業のファンとして企業公式アカウントをフォローしている人も多く、「今すぐ転職したい」人材との接点を持つには限界があります。さらに、DMによる直接的なアプローチも、スカウトメールと同様に埋もれやすく、返信率が著しく低下しています。
・SNSアカウントの運用体制
更新頻度が低かったり、発信内容が採用に特化していなかったりすると、求職者からの関心を引くことは難しくなります。時には「企業の一方的なPR」に映ってしまい、エンゲージメントが生まれません。
では、どうすればSNS採用の成果を高められるのでしょうか。まずは「応募につながる発信とは何か」ということを再定義することが重要です。たとえば、実際に働く社員が「なぜこの会社を選んだのか」「入社後にギャップを感じたこと」を率直に語るコンテンツは、共感を呼びやすく、求職者にとっても参考になります。また、採用ターゲットを明確にし、そのカテゴリの人たちがよく利用するSNSやコミュニティに絞って情報発信や関係構築を行うことで、より効果的にアプローチできます。
SNS採用は、あくまで求職者との接点づくりのひとつの手段に過ぎません。そのためにも、広報と採用の連携が求められます。単発的な発信や施策では成果は出ません。求職者の行動心理を理解し、信頼関係を築く地道な積み重ねが、SNS採用成功の第一歩となるのです。
見えているのは“興味”ではなく“反応”だけ?
SNSを活用した採用活動が一般化する中で、「投稿には一定の“いいね”がついている」「フォロワー数も増えている」といった数字に安心感を覚えることは多いかもしれません。しかし、これらの“反応”は、本当に応募意欲を示すものでしょうか。
「いいね」「閲覧数」「フォロー数」などは、あくまで興味の前段階、興味の可能性を示す指標であって、応募したいという意思そのものではありません。つまり、これらの数値に一喜一憂していても、実際の採用成果には直結しないケースがほとんどです。
たとえば、ある投稿がバズったとしても、それは情報として「面白い」「共感できる」とフォロワーやシェアされた投稿を見た人が感じただけで、「この会社で働きたい」と思ったわけではありません。また、フォローも「とりあえずあとで見返すために」行われることが多く、応募意思とは必ずしも結びつかないのです。
このように、表面的な反応だけを見て採用活動を評価すると、誤った判断をしてしまう恐れがあります。今、求められているのは、単なる反応ではなく、その奥にある「インテント」、すなわち「行動の兆し」をいかに捉えるかという視点です。
インテントとは、ユーザーが何かしらの意思決定に向けて動き出す前兆のようなもので、たとえば「採用情報ページを複数回訪れている」「同業他社の求人情報を調べている」といった行動がそれにあたります。こうしたインテントを正しく捉えることで、「まだ応募という明確な行動には至っていないが、転職を意識し始めている」層にアプローチすることが可能になります。
近年では、Web上でのこうしたインテントを可視化できるツールやサービスも登場しており、SNSと組み合わせて活用することで、より精度の高いターゲティングが可能となります。ただの「反応」ではなく、「行動の兆し」に目を向けることで、従来のスカウトや採用広報では届かなかった潜在層を掘り起こすことができるのです。
中途採用は、「今まさに転職を考えている人」だけでなく、「近い将来、動き出す可能性がある人」への継続的なアプローチが不可欠です。SNSの数字だけにとらわれず、裏側にあるインテントをどう読み取り、行動に結びつけるか。それが、これからのSNS採用の鍵となります。表層的な反応の先にある本質を見極める目を、今こそ養うべき時です。
インテント活用で“今動き出しそうな人”を見抜く
中途採用の現場では、「求人を出しても応募が来ない」「スカウトを送っても返信率が低い」といった課題が年々深刻化しています。特に優秀な人材ほど、現職に満足しているか、あるいは水面下で目立たないように転職を検討し始める傾向があり、一般的な求人市場に顔を出すタイミングはごく短期間です。このような顕在化前の優秀層とどう出会うかが、採用成功の分水嶺となっています。
そこで注目されているのが、「インテントデータ」の活用です。インテントとは、「意図」や「兆し」を意味し、採用の文脈では「転職を考え始めたサイン」と捉えることができます。たとえば、特定の求人情報を何度も閲覧している、業界の転職記事を読み始めている、LinkedInのプロフィールを更新したなどの行動は、求職者自身が明言しなくても「そろそろ動くかもしれない」というインテントの表れです。
このようなインテントを捉えることで、企業は「まだ転職市場に出ていない優秀層」と先回りして接触することが可能になります。転職サイトに登録してからスカウトを送るのではなく、もっと前の段階で「今まさに動き出しそうな人」に声をかけられれば、競合他社より一歩先にアプローチできるのです。
これを「インテントリクルーティング」と言い、優秀層との接点を効果的に創出する採用手法として注目されています。
重要なのは、「タイミング」と「パーソナライズ」の最適化です。従来の一斉スカウトは、送る側の都合であり、受け取る側からすれば内容が自分にはあっておらず的外れと感じるケースが多くありました。しかし、インテントを活用すれば、「今、転職を意識し始めた」人に対して、「なぜあなたに声をかけたのか」という理由を明確に伝えるパーソナライズしたスカウト文面を届けることができます。
たとえば、「最近〇〇業界のニュースに関心を持たれているご様子だったので、弊社の新規事業でその経験が活かせると感じました」といった一文があるだけで、候補者の心に響きやすくなります。自分の行動が見られていることに不快感を持たれるのでは?と懸念されるかもしれませんが、受け手が「ちゃんと自分を理解している」と感じる内容であれば、むしろ好印象となるケースが多いのです。
さらに、インテントの活用は「温度感の見極め」にも役立ちます。まだ情報収集段階の人に対してはカジュアルな声かけにとどめ、転職決断が近そうな人には面談を提案するなど、段階に応じた対応が可能になります。これにより、候補者との関係構築を無理なく進め、タイミングを逃さずにクロージングへとつなげることができます。
採用競争が激化する今、インテントデータの活用は「偶然の出会い」ではなく「必然の出会い」をつくるための強力な武器となります。ただし、データを得たからといって万能ではありません。重要なのは、それをどう読み解き、どうアクションにつなげるかという「人の力」です。
インテントはあくまで兆しであり、その先にある「人の本音」に耳を傾ける姿勢が問われます。人事担当者が候補者一人ひとりの背景や状況に寄り添うことで、はじめてインテントは成果に結びつくのです。
インテント活用は、テクノロジーと人間的なコミュニケーションの融合によって実現します。優秀な人材を「市場に出る前に見抜き、つながる」 それは、いまや可能な戦略であり、採用活動の未来を拓く大きなカギとなるでしょう。
Recruit Markerを活用した企業のSNS採用事例
インテントを活用したSNS採用を実践できる「Recruit Marker」をご紹介します。Recruit Markerは、日本最大級のデータベース(人物、企業、部署)にインテントを掛け合わせ、SNSやメールなど複数のチャネルを利用したマルチチャネルアプローチによって、効率良くインテントリクールティングを実現することができます。
Recruit Markerを導入して、SNS採用に成功した企業の事例をご紹介します。
3ヶ月の運用で面談設定率75%を達成【ペッツオーライ株式会社様】
「ペットと人の未来をつなぐ」をビジョンに掲げ、ペットケア事業を展開しているペッツオーライ株式会社は、Recruit Markerの導入により、SNS採用のターゲティング精度が向上し、スカウトメッセージの開封率が6%から11%に、面談設定率が40%から75%へと大きく向上しました。
同社は人事部門のないスタートアップ企業で、従来は採用担当者が手作業でターゲットを選定し、個別にメッセージを作成していましたが、Recruit Markerの活用により、スカウト配信やテンプレートの最適化が可能になり、採用担当者の業務負担を削減しながら、高い成果を実現しました。
まとめ:SNS採用は“兆し”を読み解く時代へ
SNS採用は、企業と求職者の距離を縮め、従来の求人媒体では出会えなかった人材と接点を持つうえで、大きな可能性を秘めた手法です。しかしその一方で、「発信しているのに応募が来ない」「DMを送っても反応がない」といった声が多く聞かれるのも事実です。これは、SNSにおける“いいね”や“フォロー”といった表層的な反応だけを成果と捉えてしまい、求職者の本当の行動や心理に踏み込めていないことが原因です。
求められているのは、「反応」だけではなく「兆し」を見抜く視点です。つまり、転職を考え始めた人の兆しをいち早くキャッチし、的確なタイミングと内容でアプローチすることが、これからの採用活動には不可欠となります。そのカギを握るのが、インテントデータの活用です。
インテントリクールティングを通じて、「今まさに動き出しそうな人材」と出会い、パーソナライズされた情報提供やスカウトを行うことで、求職者の心を動かすことが可能になります。Recruit Markerを活用すれば、精度の高いターゲティングと効率的な運用を両立し、採用活動全体の質を向上させることができます。
SNS採用は、ただ発信するだけの時代から、行動の背景を読み取り、求職者一人ひとりに寄り添う戦略的なフェーズへと進化しています。「今、誰が動き出しそうか」を見極め、適切なタイミングで接点を持つ——その積み重ねこそが、これからの中途採用における最大の差別化要因となるのです。