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2024.11.08

『営業の科学』著者 & BCGのエキスパートが語るインテントセールスの正体

目次

この記事は約 14 分で読めます。

企業のニーズをリアルタイムでつかみ、顧客にとって最適なタイミングでアプローチできる営業手法「インテントセールス」が、いま注目を集めている。
NewsPicks Brand Designは、8月27日にトークイベント「大企業からコンサルまで。新時代の営業手法インテントセールスを体感せよ。」を開催。

顧客企業のインテント(興味・関心)をつかむことが、なぜいま営業活動に求められるのか。どうすれば、その興味・関心をタイムリーにつかむことができるのか。そして、大企業が導入したインテントセールスはどのようなパラダイムシフトを起こしたのか。KEYNOTEとTALK SESSIONを通じて議論を交わした。

本記事では、営業領域の有識者として『営業の科学』の著者である高橋浩一氏、ボストン コンサルティング グループ(BCG)パートナー & アソシエイト・ディレクターの石附洋徳氏、インテントセールスのリーディングカンパニーであるSales Markerから小笠原羽恭氏を招いたKEYNOTEの模様をダイジェストでお届けする。

※本記事はイベント内容を再構成したものです。実際の発言とは一部異なる部分があります。

セッション全編を動画で見る

いま、大企業が抱える「ふたつの営業課題」

──インテントセールスについて議論する前にお聞きしたいのですが、みなさんはいま、企業が抱える営業課題をどう認識していますか?

小笠原 大きく分けてふたつあると考えています。

ひとつは、「手当たり次第の営業手法からの脱却」です。BtoBサービスで新規顧客を開拓する場合、業界や売上、地域、社員数といった視点でターゲット企業を選んでいきますが、この作業には数カ月もの時間がかかり、その間に顧客ニーズは変化してしまいます。

また、ターゲット企業を絞り込んだ後も、その企業がいまなにに興味・関心を持っているかがわからない状態で、リストの頭から総当たりにアプローチすることが常識となっています。まずは、この常識から脱却しなければいけません。

もうひとつが、「バイヤージャーニーの変化への対応」です。従来のBtoBビジネスでは、顧客が商品やサービスを初めて認知し、興味・関心を抱き、比較・検討を経て購入に至るまでのプロセスが、自社サイトやオウンドメディアを訪問してくれる前提で設計されていました。

ところが、いまやバイヤージャーニーは多様化・複雑化し、顧客はウェブ上でさまざまな観点から情報を収集しています。その結果、潜在顧客が自社サイトを訪れることなく購買の意思決定に至り、リード化できないケースが増えています。

したがって、顧客のウェブ上での検索行動を分析し、どのような興味・関心があるか、どのような課題を抱えているのかを把握・分析することの重要性がますます高まっていると考えられます。

高橋 ひと昔前のハイパフォーマーなセールスパーソンは、手当たり次第ではあるけれど尋常ではない仕事量をこなしていました。1日に何百件と営業電話をかけることもいとわないし、断られても気にしないような。しかし、いつまでもハイパフォーマーに頼り続けるわけにはいきません。

また、最近よく「新規顧客獲得のパフォーマンスが落ちてきた」というお悩みの声を聞きます。小笠原さんがご指摘のとおり、顧客への営業の効率を改善し、興味・関心に合わせたアプローチをしていかないと、なかなか商談化や成約につながらない。

そういった事実を受け入れ、旧来の営業手法からの脱却を真剣に考えている会社は増えていると感じます。

石附 「バイヤージャーニーの変化」というお話がありましたが、私も営業の変革を支援させていただく中で、デジタルチャネルの増加により、顧客がさまざまな情報を簡単に得られるようになったため、以前より営業が難しくなったという声をよく耳にします。

そうなると、もはやひとりのハイパフォーマーに頼っていては会社全体の業績もなかなかグロースしません。働ける時間と人員が限られる中で、どれだけ一人ひとりの生産性を高められるか、バラツキをなくして営業組織全体の総合力を高められるかが問われていますし、そのために営業組織やプロセスを変革する必要性を多くの企業が感じていると思います。

──営業の生産性向上は、いまや多くの企業が認識している共通課題だと思います。しかし、克服できている企業はまだまだ少ない。その背景にはどういった事情があるのでしょうか。

石附 生産性という言葉を、「どれだけ働けるか」と「どれだけ成果を上げられるか」に分解して考える必要があります。

前者は、限られた労働時間の中で日報の作成や顧客調査などに費やす時間を効率化・省力化し、顧客と向き合う本当の意味での営業に時間を使えるようにすること。

後者は、どうしても全員がハイパフォーマーにはなれない中で、テクノロジーをうまく活用して組織全体の営業力を底上げすること。

「時間の捻出」と「営業のクオリティ向上」のかけ算で可能になるのが生産性の向上であり、その営業手法の確立が、多くの企業に共通する課題だと思います。

高橋 生産性の向上を考える際は、部下をマネジメントする上司の役割も重要です。ひと昔前の「100件の顧客すべてにアプローチさせる」という立場から、「100件の顧客のうち本当にアプローチすべき上位10社はどこか、なぜその顧客にアプローチすべきなのか」を教える役割へのシフトが求められている。

それができないと、時間と物量にものを言わせた営業手法からは脱却できないと思います。

なぜ、インテントセールスが求められるのか

──ここで小笠原さんにお聞きしたいのが、インテントセールスについてです。どのような手法でこの課題を解決していくのでしょうか。

小笠原 インテントセールスは、顧客のウェブ上での検索行動から得られるインテント(興味・関心)に基づいて行う新時代の営業手法です。

顧客の興味・関心を把握する上でとくに重要なのが、タイミングです。インテントセールスでは、ウェブ上での行動履歴や閲覧内容などのデータ(インテントデータ)を分析することで、その企業が直面している課題やニーズを把握し、顧客にとって最適なタイミングでコミュニケーションを行うことが可能になります。その結果、商談化率の向上が期待できます。

インテントセールスには、4つのポイントがあります。

ひとつ目は、ニーズに基づいた企業のターゲティングです。ウェブ検索などの行動データをもとに、適切にターゲティングをします。

ふたつ目は、部署や人物のターゲティングです。企業で実際になにかの導入を決定するのは、当たり前ですが人です。商談を打診する際に、具体的な意思決定者の名前を把握しているかどうかは非常に重要です。

3つ目は、顧客ニーズに合わせた訴求内容の作成です。インテントデータを活用してアプローチ先のミッションや課題を把握することで、相手に寄り添った提案が可能になります。

4つ目は、マルチチャネルアプローチです。デジタル化により顧客との接点が多様化する中、最適なチャネルを通じて効果的にアプローチを行うことができます。

──高橋さんと石附さんは、インテントセールスという新しい営業手法についてどうお考えですか?

高橋 先ほどの「バイヤージャーニーの変化」に戻るのですが、とくにコロナ禍以降、各社がウェビナーやホワイトペーパーなどのコンテンツマーケティングに力を入れるようになりました。

そうすると、わざわざ話を聞かなくても、自分でじっくり調べ、検討して、好きなタイミングで購買したいと考える顧客が当然増えてきます。つまり、主導権が顧客側に寄ったわけです。

逆に売る側から見ると、ハードルが上がったことになります。営業活動には、不信の壁、不要の壁、不適の壁、不急の壁という「4つの不」があると言われますが、いちばん高い壁が不急の壁です。

この不急の壁を突破するためには、「いま買っていただくとお安くできますよ」といった価格メリットを提示する以外にあまり武器がないという声をよく聞いていました。

しかし顧客ニーズとタイミングを把握したインテントデータの活用は、そんな不急の壁を突破する大きな武器になるかもしれません。デジタル化が進む時代とうまくかみ合っていることが、インテントセールスが注目を集める理由のひとつかなと感じています。

石附 先ほど小笠原さんがインテントセールスの4つのポイントを挙げてくれましたが、このようなパーソナルマーケティングは、BtoC領域では10年ほど前からすでに行われていたように思います。

「あなたに必要なものをお届けします」と売り手側が生活者をパーソナライゼーションして営業をかけることは、BtoCではもはや当たり前。そのトレンドが、BtoB領域にも到来したという印象です。

BtoBにおいても営業を受ける顧客はひとりの生活者です。個人の体験として、自社の情報を調べ、その情報をもとにアプローチされることがデフォルトになりつつある。

ひと昔前までは「なんでそんなこと知ってるの?」と気味悪がられたのが、いまや「ありがたい」と感じるようになっている。その変化のタイミングが、インテントセールスが広がるタイミングとうまくマッチしているように思います。

──BtoCに比べ、BtoBセールスにおける顧客のパーソナライゼーションは担当者と決裁者が違うという点で難易度が高そうにも思えます。高橋さんはどうお考えでしょうか。

高橋 担当者と決裁者でアプローチを大きく変える必要があると思います。

私の会社でも無料セミナーを毎週開催しているのですが、強い関心を持って毎回視聴してくださる担当者レベルの方は多くいらっしゃいます。

一方で、決裁者の方にはそこまでの時間的な余裕はありません。そんな中、時間を割いてセミナーに参加してくださる決裁者の方の行動には、「理由」が強く紐づいています。つまり、セミナーを通して得ようとする情報の重みや切迫感が違うんです。そこに、決裁者のリアルが表れていると感じています。

そういった意味では、人物を特定できるインテントデータをうまく活用することによって、担当者と決裁者それぞれにパーソナライズしたアプローチが実現できそうです。

顧客インテントは、「あるか、ないか」ではなく「つくる」

──ここでさらに小笠原さんにお聞きしたいのが、インテントセールスに欠かせないというインテントホイールについてです。これはどういった概念なのでしょうか。

小笠原 インテントホイールは、インテントセールスを実践するにあたってセールス活動とマーケティング活動を融合させ、持続可能な事業成長を実現するための概念です。

これまでは、セールスとマーケティングの施策は分断されることが多くありました。しかしインテントホイールは、顧客のインテント(興味・関心)を起点にこれらの施策を融合し、継続的なサイクルを回すことで事業成長を促進するモデルとなっています。

インテントホイールは、「インテントジェネレーション」「インテントシグナル」「インテントアプローチ」の3つのプロセスで構成されています。

このサイクルのカギを握るのが、「インテントジェネレーション」です。顧客に興味・関心が「あるか、ないか」に依存するのではなく、ブランディングやマーケティング施策を通じて、顧客の興味・関心を能動的に生み出していきます(Generate:生成する)。

次に、「インテントシグナル」では、インテントジェネレーションによって生み出された興味・関心を、ウェブ上での検索行動などのインテントデータをもとに検知し、顧客がどの購買フェーズにいるのかをリアルタイムに捉えます。

最後に、インテントシグナルで捉えた顧客の興味・関心に応じてパーソナライズされたアプローチを行うのが、「インテントアプローチ」です。広告、フォーム、コールなどのマルチチャネルを駆使し、顧客ごとにパーソナライズされたマルチメッセージを掛け合わせてアプローチを最適化し、商談やクロージングへとつなげていきます。

──ひとつ目のインテントジェネレーションですが、これは顧客にそれぞれの課題に基づく興味・関心を想起させる、生み出していくということでしょうか。

小笠原 はい。インテントジェネレーションには、さまざまな広告やコンテンツマーケティングが有効です。たとえば、テレビCM、タクシーCM、エレベーターCMなどが挙げられます。最近では、YouTube動画も非常に高い効果を発揮しています。

石附 営業の世界では昔から、「需要のない人にボールペンを売るには?」という問いが語り継がれています。その問いに答えるように、いままで優秀なセールスパーソンは顧客から課題を引き出し、需要をつくって売ってきました。

インテントジェネレーションは需要をつくるさらに一歩手前、興味・関心を生み出す部分に着目し、仕組みとして回そうとしている点がすごく面白いと感じます。

もうひとつ、企業視点で考えると、マーケティングとセールスの予算配分の考え方にも活用できそうです。

「この商材は広告やSNSでジェネレーションしてからセールスに回したほうが効率的だ」「この商材はタクシーCMじゃジェネレーションできそうもないから、セールスを通じてジェネレーションしたほうがいい」など、商材や市場の特性に応じてインテントホイールを回すサイクルが考えられそうです。

その過程で適切な予算配分が見いだせれば、マーケティングとセールスの双方が進化できる。そんな使い方のイメージがわきました。

高橋 新規営業をかける際、チームのメンバーにアプローチリストを配分しますよね。そこでよく起こるのが、パフォーマンスの低い人ほど「リストが枯れた」と言い始める現象です。

パフォーマンスの低い人は、とりあえずリストの頭から片っ端に架電します。そして、ひと通り接触したらそこで終わってしまう。しかしハイパフォーマーな人は、「リストが枯れた」とはあまり言わないんです。

実はハイパフォーマーな人の頭の中にはインテントホイールに似たイメージがあって、ぐるぐるとサイクルを回しながら、手を替え品を替えてタイミングを待つ。そうやって顧客をホールドしているから、リストがなかなか枯れないんですよね。

インテントセールスでこれまで一部のハイパフォーマーが属人的にやっていたサイクルを型化して、みんなで回していく。その効果をチーム全体で信じられると、戦力が底上げされ、バラツキのない営業組織の構築につながっていくのではないかと思います。

──インテントセールス、そしてインテントホイールの可能性は理解できました。では、小笠原さんの「Sales Marker」はこれらの課題にどう効いてくるのでしょうか。

小笠原 インテントセールスの実現を支援するため、私たちが展開しているサービスが「Sales Marker」です。

「Sales Marker」が提供するのは、インテントデータに基づいた企業ターゲティング、部署や人物の選定、ニーズに合わせた訴求内容の作成、マルチチャネルアプローチ。加えて、企業データベース、人物データベースなどです。

現在、500社を超える企業に導入いただいており、ある企業では、月に2、3件しか取れなかった商談が、月に200件近く取れるようになったというケースも生まれています。

実際に私たち自身も「Sales Marker」を活用しているのですが、インテントホイールのサイクル通り、認知広告を打つ際にはインテントジェネレーションを目的とし、必ず顧客による検索行動を引き起こすよう意識しています。

その検索行動を「Sales Marker」を通じてインテントシグナルとしてキャッチし、私たちが提供するサービスとその企業のニーズがマッチしていることを確認した上で、マルチチャネル × マルチメッセージのタイムリーなインテントアプローチによって、商談・成約につなげています。

インテントセールス導入のポイントは「小さく、クイックに」

──石附さん、高橋さんにお聞きします。大企業でインテントセールスのような新しい営業手法を導入する際に、想定されるハードルはありますか?

石附 インテントセールスに限った話ではありませんが、大企業には慣習やルーティンが根強く残りがちです。

それまでのやり方で成果を上げてきたかつてのハイパフォーマーが意思決定層にいるため、新しいツールや仕組みの導入を提案しても「こんな営業手法は必要ない。いまのままでいい」となってしまうことが予想されます。

そのハードルを越えるためには、まずはひとつの商材に限定して、インテントセールスの手法を小さく、クイックに回してみる。そこで成果を出して、少しずつスケールアップしていくアプローチがいいと思います。

高橋 インテントセールスは、確かに新しい手法かもしれません。しかし、顧客の行動やニーズを細かく追いかけ、相手が望むタイミングで望まれるアプローチをし、その反応を見ながらナーチャリングしていく。このプロセスは、以前からハイパフォーマーが実践していたことにすごく近いですよね。

ハイパフォーマーのスキルや知見を型化して、営業組織全体で実践できるようにするのがインテントセールスであり、それを支援するサービスが「Sales Marker」である。そう考えると、意思決定層にとっても抵抗感のある話ではない気がします。

石附 そうですね。これまでは「なぜこの商談は成約できたのか」「なぜこの商談は失注したのか」の原因を、「ハイパフォーマーのAさんだからだよね」という属人的な要因に帰結させてしまうことがあったと思います。

しかし、ツールを使ってインテントセールスを企業に実装することで、これまでハイパフォーマーの暗黙知だった勝ちパターンが組織の形式知になり、共有されていく。

仮に「営業はデータに頼るものじゃない」などと言うトップがいたとしても、組織全体が進化することに異を唱えるトップはいないと思います。そういった切り口で経営層を巻き込みながら働きかけていくと、コンセンサスが図りやすいのではないでしょうか。

高橋 このイベントにいらっしゃっているみなさんは、営業組織に再現性を高めるヒントを探しに来られたと思います。再現性を高めるために大事なことはなにか。私は、信じられることだと考えています。

いままでは、なぜお客さんが商品やサービスを買ってくれたのか、なんだかんだでわからなかったと思うんです。それではどうやっても、再現性は生まれにくい。

ですがインテントセールスのような手法があると、購買プロセスを自分でロジカルに説明できるようになります。

説明できるものに結果がきちんとついてくるから、「なるほど、こうしてうまくいったんだ」とみんなが納得できる。信じられる。これも、インテントセールスの導入に当たって大事なポイントだと思います。

──小笠原さんにお聞きします。インテントセールスはいま、大きな注目を集めています。今後、日本のビジネスシーンにどのようなインパクトを与えていくのでしょうか。

小笠原 セールスは、商品をつくるタイミングからすでに始まっていると考えています。つまり、その前段のマーケティングも包含したビジネス活動です。

これからは、 「どんな顧客のどんな課題にフォーカスするか」という商品開発の段階から、マーケティング、ブランディング、セールスといったビジネス活動全般に至るまで、網羅的にインテントセールスが活用されることで、顧客起点のビジネス開発が実現できるようになると考えています。

それほどのポテンシャルを、インテントセールスは秘めていると信じています。

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制作:NewsPicks Brand Design
執筆:堀尾大悟
撮影:高橋宗正
デザイン:髙木菜々子
編集:増田謙治
企画:梅山景央
引用元:https://newspicks.com/news/10592010

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