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- インバウンドマーケティングとは?
- インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いとは?
- インバウンドマーケティングが重要視される背景
- 1. アウトバウンドマーケティングの限界
- 2. 消費者行動の変容
- 3. デジタル化の加速
- インバウンドマーケティングのメリット
- 1. 消費者の自発的な関与を促す
- 2. コスト効率の良さ
- 3. 効果の追跡と測定の容易さ
- インバウンドマーケティングの代表的な手法
- 1. SEO (Search Engine Optimization)
- 2. オウンドメディアの展開
- 3. ソーシャルメディア戦略
- 4. リスティング広告
- 5. 調査コンテンツの活用
- 6. SNS広告
- 7. YouTubeコンテンツ
- 8. ウェビナーの開催
- 9. ホワイトペーパーやeBook
- 10. 事例の提供
- 11. インサイドセールス
- 12. CTAの最適化
- 13.MA(マーケティングオートメーション)の活用
- インバウンドマーケティングの設計
- Attract(引きつける)
- Engage(関与させる)
- Delight(喜ばせる)
- インバウンドマーケティングを導入する手順
- ステップ1: 目的の設定
- ステップ2: ターゲットペルソナの設定
- ステップ3: カスタマージャーニーの設計
- ステップ4: コンテンツの作成と配信
- ステップ5: 効果検証
- 1. freee株式会社
- 2. 株式会社Sales Marker
- 3. キリン株式会社
- 本記事のまとめ
デジタルマーケティングの世界では、消費者の注意を引き、関心を持続させることが成功のポイントとなります。その中でも、「インバウンドマーケティング」は、顧客自らが企業のコンテンツに惹かれて接近する手法として注目されています。
本記事では、インバウンドマーケティングの基本的な概念と定義を解説し、なぜこれが現代のマーケティング戦略として非常に重要であるのかを掘り下げます。
インバウンドマーケティングとは?
インバウンドマーケティングとは、顧客が自ら企業の提供するコンテンツに魅力を感じて接近するマーケティング手法です。このアプローチは、消費者に直接広告を打ち出す従来のアウトバウンドマーケティング(直接的な広告やセールスコールなど)とは異なり、消費者が自発的に情報を求める行動に焦点を当てます。
インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いとは?
インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングは、それぞれ異なるアプローチを持つマーケティング戦略です。次の比較表では、両方の手法の主要な特徴と違いをまとめています。
インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いについて理解を深めることで、どちらの戦略がビジネスに適しているか判断する手助けになります。同様に、営業戦略にもインバウンドとアウトバウンドのアプローチが存在し、それぞれ異なるメリットがあります。
「インバウンド営業とは?アウトバウンド営業の違いとメリットを解説」という過去記事で、これらの営業手法の詳細についてさらに詳しく掘り下げます。是非、インバウンド営業とアウトバウンド営業の違いを理解し、自社のニーズに最適な営業戦略を見つけるために、こちらの記事もご覧ください。
インバウンドマーケティングが重要視される背景
インバウンドマーケティングが急速に注目されるようになった背景には、消費者行動の変化、アウトバウンドマーケティング手法の限界、そして企業のDX化(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んだことが挙げられます。
1. アウトバウンドマーケティングの限界
デジタル広告市場は拡大を続けていますが、消費者のデジタル広告に対する信頼は低下しています。実際、2021年の調査では、デジタル広告を信頼できると回答した消費者は13%に過ぎませんでした。また、広告から直接行動に移す消費者は約10%と、非常に限られています。
このようなデータから、短期的な広告施策だけに依存するアウトバウンドマーケティングの効果が低下していることが明らかです。
2. 消費者行動の変容
スマートフォンの普及が進むにつれて、消費者の情報取得や購買行動が大きく変化しています。インターネットを通じた商品購入は日常的な行為となり、多くの消費者が購入前にオンラインで情報収集を行っています。
たとえば、自転車の購入においても、93%の消費者がインターネット検索からスタートし、検索結果の上位に表示されることが購買へとつながる可能性を高めています。
3. デジタル化の加速
コロナ禍における社会的制限は、企業にデジタルチャネルへのシフトを促しました。対面での営業やイベントが難しくなる中、多くの企業がオンラインでのプレゼンス強化に注力しています。
この変化は、インバウンドマーケティングが持つ「顧客に自ら情報を求めさせる」力が、企業のデジタル戦略において中核的な役割を果たすようになったことを示しています。
これらの背景を踏まえると、インバウンドマーケティングは単なる流行ではなく、消費者のニーズに応え、デジタル時代における持続可能なビジネス成長を促進する必要不可欠な戦略となっています。この手法により、企業は顧客の変化する行動パターンに適応し、より個人化された関係を構築することが可能です。
インバウンドマーケティングのメリット
インバウンドマーケティングは、顧客が自ら情報を求めて行動する現代の購買行動にマッチした効果的なマーケティング手法です。ここでは、3つの大きなメリットがあります。
1. 消費者の自発的な関与を促す
インバウンドマーケティングの最大の魅力は、広告としての押しつけがなく、消費者が自然に情報を受け入れやすい点にあります。検索エンジンやブログ、SNSを通じて提供されるコンテンツは、消費者が自分のニーズに基づいて探求するものです。このプロセスを通じて、消費者は徐々に関心を持ち、製品やサービスへの理解を深め、最終的には購入に至る可能性が高まります。
2. コスト効率の良さ
インバウンドマーケティングは、一般的なアウトバウンドマーケティングに比べてコストが大幅に低く抑えられることが多いです。例えば、テレビCMのような広告手法では、放映一回ごとに高額なコストが発生しますが、インバウンドマーケティングではコンテンツを一度作成すれば、長期にわたってウェブサイトやソーシャルメディアで利用でき、継続的に見込み客を引き付けることができます。
初期投資は必要ですが、一度作成した質の高いコンテンツは時間を経ても価値を保ち続けますのでコスト効率の良さもメリットに含まれます。
3. 効果の追跡と測定の容易さ
インバウンドマーケティングのもう一つの利点は、その効果を正確に測定しやすいことです。デジタルマーケティングツールを使用することで、ウェブサイトの訪問者数、ページビュー、クリック数、そして最終的な転換率まで、さまざまな指標をリアルタイムで追跡することができます。
これにより、どのコンテンツが効果的であるか、どの部分が改善を必要としているかを即座に把握し、迅速に対策を講じることが可能です。この分析データはマーケティング戦略の調整に直接活用され、よりターゲットに合ったキャンペーンの実施が可能になります。
インバウンドマーケティングの代表的な手法
インバウンドマーケティングの代表的な手法を13つ紹介します。
1. SEO (Search Engine Optimization)
検索エンジンでの自社サイトの上位表示を目指し、潜在顧客が自然と情報を求めて訪れるような状況を作り出します。特に解決すべき課題が明確なユーザーに有効です。
2. オウンドメディアの展開
自社が管理するメディアを通じて、ブランドの魅力や価値を伝えるコンテンツを提供します。SEOと連携し、質の高い情報を継続的に発信することが重要です。
3. ソーシャルメディア戦略
Facebook、Instagram、LinkedInなどのプラットフォームを活用して、ブランドメッセージの拡散や顧客とのダイレクトなコミュニケーションを図ります。
4. リスティング広告
即効性が高く、特定のキーワードで検索された際に、関連する広告を表示させます。このタイミングでのアプローチは、見込み顧客の関心が高いタイミングであるため効果的です。
5. 調査コンテンツの活用
市場調査やアンケートの結果を基にしたコンテンツは、その客観性と信頼性で高い説得力を持ちます。これらを広く共有することで、ブランドの権威を築くことができます。
6. SNS広告
広範なデータを基にした精密なターゲティングが可能なSNS広告を利用し、特定のユーザー層に直接アプローチします。これにより、広告の違和感を減らしながら効果的に認知度を上げることが可能です。
7. YouTubeコンテンツ
視覚的に情報を伝えるYouTubeは、情報の伝達効率が非常に高く、長期にわたって利用できるコンテンツを提供することができます。他のメディアと連携させることで相乗効果を期待できます。
8. ウェビナーの開催
オンラインでセミナーやカンファレンスを実施することで、地理的な制約なく広範囲のリードを集めることが可能です。また、実施したウェビナーの録画を後日公開することで、継続的なリード獲得につながります。
9. ホワイトペーパーやeBook
リード獲得のために、メールアドレスの提供を求める資料を作成します。これにより、情報収集段階の見込み顧客に対して有用な情報を提供しつつ、貴重な顧客データを獲得します。
10. 事例の提供
成功事例や導入事例を通じて、見込み顧客に対して製品やサービスの実際の効果を示します。これにより、購入決定に対する信頼と確信を与えることができます。
11. インサイドセールス
見込み顧客との初期接触から商談への橋渡しを行うインサイドセールスを強化します。顧客ニーズに応じた情報提供や質問への対応を通じて、顧客との関係を深め、商談へとつなげます。
12. CTAの最適化
Webサイト上での行動喚起(CTA)を見直し、ユーザーに明確な次のステップを提案します。これにより、サイト訪問者からリードへと変換する確率を高めます。
13.MA(マーケティングオートメーション)の活用
顧客行動に基づいて自動化されたマーケティングアクションを設計し、効率的にリードを育成します。これにより、リードごとに最適な情報を提供し、購入への道をスムーズにします。
インバウンドマーケティングの設計
インバウンドマーケティングは、顧客のニーズの変化に対応し、長期的な関係を築くために設計されたマーケティング手法です。Hubspotなどで有名になったこの手法は、主に
・「Attract(引きつける)」
・「Engage(関与させる)」
・「Delight(喜ばせる)」
の3つのステージに分けられます。ここでは、各ステージごとにどのようなアクションが求められるのかを簡潔に説明します。
Attract(引きつける)
この初期段階では、まず顧客に自社を認知してもらうことが重要です。直接的に製品やサービスを宣伝するのではなく、顧客が直面している問題を解決するための有益な情報を提供することが求められます。
ここでのコンテンツはSEOを意識して作成し、SNSでの配信も効果的です。顧客のペルソナ(理想の顧客像)を事前に定義しておくことで、ターゲット層の興味を引き、自社への関心を喚起するコンテンツを提供できます。ペルソナは顧客の年齢、職業、関心事など、細部にわたり設計されるべきです。
Engage(関与させる)
顧客がブランドを認識した後は、さらに深い関与を促すステージです。ここでは、顧客が抱える具体的な問題を解決する方法を提供し、その過程で自社の製品やサービスがどのように価値を提供するかを示します。
このステージの目的は、顧客に自社の解決策を理解し、関心を持ってもらうことです。具体的なサービスの説明よりも、解決策の提案を前面に出し、顧客が納得する情報を提供することが重要です。
Delight(喜ばせる)
顧客が製品やサービスを利用した後のステージです。ここでは、顧客が持続的に満足し、リピーターになるような取り組みを行います。カスタマーサポートの質を高めたり、顧客のニーズに合わせた新サービスを提供することが含まれます。また、定期的なニュースレターや、購入後のフォローアップメールで感謝を示すことも、顧客との良好な関係を保つためには重要です。
インバウンドマーケティングを導入する手順
インバウンドマーケティングの導入は、組織的な取り組みを要求し、明確な目標と戦略的なアプローチが求められます。ここでは、インバウンドマーケティングを成功させるための5つの基本的なステップを紹介します。
ステップ1: 目的の設定
まず、なぜインバウンドマーケティングを導入するのかという目的を明確にします。一般的な目的としては、リード獲得の増加、売上向上、ブランド認知度の向上などがあります。これらの目的を具体化し、達成すべき具体的な目標を設定します。
例えば、「6か月以内にリード獲得コストを20%削減する」などといった、明確で測定可能な目標が理想です。次に、これらの目標を達成するための月間KPIを設定し、目標達成のためのロードマップを作成します。
ステップ2: ターゲットペルソナの設定
理想的な顧客(ペルソナ)を定義します。ペルソナは、ターゲット顧客の詳細なプロフィールで、その人々の行動パターン、ニーズ、課題などを含みます。ペルソナを明確にすることで、どのようなコンテンツが求められているかがわかり、マーケティングチーム内で一貫した顧客イメージを共有できます。このステップは、効果的なコンテンツ戦略を構築する基盤となります。
ステップ3: カスタマージャーニーの設計
ペルソナが定まったら、そのペルソナが購入を決断するまでのプロセス、つまりカスタマージャーニーを設計します。このジャーニーを段階ごとにマッピングし
1.気づき
2.認知
3.検討
4.導入
5.利用
というフェーズで構成します。各フェーズにおいて、顧客が必要とする情報やサポートを提供する戦略を立てます。
ステップ4: コンテンツの作成と配信
カスタマージャーニーに沿って、各ステージで必要なコンテンツを作成し、適切なチャネルを通じて配信します。コンテンツは、顧客の顕在ニーズ(自覚しているニーズ)と潜在ニーズ(まだ認識していないニーズ)の両方に対応する内容であるべきです。コンテンツの効果を最大化するためには、SEO最適化を施し、SNS、メール、ブログなど複数のチャネルを活用します。
ステップ5: 効果検証
キャンペーンの効果を定期的に検証し、必要に応じて戦略を調整します。これには、設定したKPIをもとにパフォーマンスを評価し、コンテンツの閲覧数やリード獲得数、売上げなど、具体的な成果を測定することが含まれます。効果が期待に満たない場合は、原因を分析し、改善策を講じることが必要です。
これらのステップを通じて、インバウンドマーケティングは継続的な改善とともに進化していくため、柔軟な対応と定期的な評価が成功のポイントとなります。
インバウンドマーケティングは、顧客からの自発的な関心を引き出し、長期的な関係を構築する手法です。ここでは、freee株式会社、株式会社Sales Marker、キリン株式会社のインバウンドマーケティングの成功事例を紹介します。
1. freee株式会社
freee株式会社は、会計ソフトや人事労務ソフトを提供する企業です。インバウンドマーケティングの成功の一例として、freee株式会社は教育的なコンテンツを用いたブログやセミナーを積極的に提供しています。これにより、会計や人事労務の知識が限られた中小企業の経営者や担当者に対して、freee株式会社が直面する課題解決のための情報を提供しました。
この情報提供が顧客の信頼を獲得し、製品の採用につながりました。また、これらのコンテンツはSEOにも最適化されており、検索エンジンからの流入も増加させる効果を持っています。
2. 株式会社Sales Marker
Sales Markerは新時代の営業「インテントセールス」を実現してくれるツールです。インテントセールスとは、興味関心など意図(intent)をもって起こした行動データを分析しセールスを実施することです。Sales Markerを活用することで、顧客の興味関心データなどを元に営業を行ったり顧客ニーズや検討状況を管理したりといったことが可能です。
「インテントセールス」を活用することで、見込み顧客が抱える疑問や問題に対する具体的な解答や解決策をキャッチアップして効果的なインバウンドマーケティングを実現します。
3. キリン株式会社
キリン株式会社は、広範囲に及ぶ飲料製品を扱う大手企業で、特にブランディングと顧客エンゲージメントの強化にインバウンドマーケティングを活用しています。キリンは、消費者の健康やウェルネスに対する意識が高まる中、健康に良い飲料の情報提供を通じて顧客との関係を深めています。
キリン株式会社ブログポスト、インフォグラフィック、教育動画など、多様な形式で消費者に役立つコンテンツを提供し、これが消費者のロイヤルティ向上に繋がっています。また、キャンペーンやイベントへの参加を促すことで、オンラインとオフラインの両方で消費者と積極的に関わることを試みています。
これらの企業は、それぞれ異なる業界でインバウンドマーケティングを通じて成功を収めており、そのアプローチは他の企業にとっても参考になるものです。これらの事例から学ぶことで、あなたのビジネスにも適切なインバウンドマーケティング戦略を設計し実行することが可能になるでしょう。
本記事のまとめ
インバウンドマーケティングは、顧客が自ら企業の提供するコンテンツに惹かれて接近するマーケティング手法で、顧客が自発的に情報を求める行動に焦点を当てています。これに対し、アウトバウンドマーケティングは、企業から積極的に情報を発信し、顧客にアプローチする手法です。
本記事では、インバウンドマーケティングの基本的な概念とその導入方法について解説し、さらにfreee株式会社、株式会社Sales Marker、キリン株式会社といった企業の成功事例を紹介しています。
インバウンドマーケティングの魅力の一つは、コスト効率の良さです。一度作成された質の高いコンテンツは長期にわたって価値を持続し、デジタルマーケティングツールを用いた効果測定が容易なため、戦略の調整と改善がしやすいという利点があります。これにより、企業はターゲットとなる顧客層に正確にリーチし、長期的な関係構築に有利な環境を作り出すことができます。
具体的な企業の事例としては、freee株式会社は会計ソフトや人事労務ソフトを提供しつつ、教育的なブログやセミナーを通じて中小企業経営者や担当者に向けた情報提供を行い、製品の採用へと繋げています。株式会社Sales Markerは、BtoB市場向けにリード生成ツールを提供し、見込み客やリード獲得の問題解決を支援しています。また、キリン株式会社は健康志向の高い消費者に向けて、健康に良い飲料に関する情報をブログやインフォグラフィックを通じて提供し、顧客との関係を深めています。
これらの事例からも明らかなように、インバウンドマーケティングは消費者のニーズに応えることで、デジタル時代における持続可能なビジネス成長を促進する戦略として非常に有効です。企業はこれを利用して、より個人化された顧客体験を提供し、長期的な顧客ロイヤルティを築くことが可能になります。