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サードパーティクッキー廃止がもたらす影響とは

サードパーティクッキーとは

クッキーは、ウェブサイトにアクセスする際にPCやスマホのブラウザに保存され、訪問履歴や回数が記録されます。主にウェブアクセスやサイト内のサービスを向上させるために利用されます。

 

ECサイトの例では、クッキーを使ってショッピング体験を向上させています。例えば、商品をカートに入れた後にログアウトし、再び同じECサイトにログインすると、カートの中の商品が保存されていた経験のある方は多いのではないでしょうか。こうしたクッキーを使用した仕組みによって、以前選んだ商品を再度選択せずに、スムーズに買い物を続けることができます。

 

クッキーは大きく分けて、ユーザーが訪れたウェブサイトから発行される「ファーストパーティクッキー」と、訪れていないドメインから発行される「サードパーティクッキー」の2つに分類されます。

 

ファーストパーティクッキーは通常、ユーザーによってブロックされにくく、訪れたウェブサイトと直接関連します。例えば、Webサイトのドメインが「abc.com」の場合、「abc.com」から発行されるクッキーがファーストパーティクッキーになります。

 

対照的に、サードパーティクッキーは異なるドメインから発行され、主にウェブサイト上に設置された広告バナーなどを経由して利用されます。例えば、ウェブサイトのドメインが「abc.com」の場合、広告バナーを通じて発行された「xyz.com」のクッキーがサードパーティクッキーになります。サードパーティクッキーは、異なるドメインを横断してユーザの行動履歴を保持し、主にリターゲティング広告などで広く活用されています。

サードパーティクッキー廃止の背景

しかしながら、近年では個人のプライバシー保護の観点からブラウザ側での規制が進み、サードパーティクッキーの利用が制限される場面が多くなっています。サードパーティクッキーにより、第三者がユーザーの意図しないところでユーザーの行動を追跡しているということが、個人のプライバシーの侵害に繋がるという見方が広がっているのです。

 

サードパーティクッキー規制の主な背景としては次の2つが挙げられます。

EU一般データ保護規則(GDPR)の施行

GDPRとは、EUが2018年5月25日に施行した個人データ保護やその取り扱いについて詳細に定められた法令のことです。インターネットの普及により、企業が膨大な個人データを取得できるようになった背景を受けて、個人や企業のコントロールが及ばない範囲で「個人の権利」が侵害されることを防ぐことを目的としています。

 

EUにおける法令であることから、日本あるいは日系企業には直接的に関係のない話だと思われるかもしれませんが、子会社や関連会社がEU内に所在する場合や、EUに所在する顧客のデータを取り扱う場合も、GDPRの規制の対象となります。

 

GDPRで保護対象となる「個人データ」には、個人の氏名や識別番号、位置データの他に、IPアドレスやクッキーも含まれます。

改正個人情報保護法の施行

日本においても、個人情報を保護する機運が高まり、「個人情報保護法」が2003年5月に制定、2005年4月に全面施行されました。個人情報保護法が定める個人情報とは、生存する個人に関する情報で、氏名や住所、生年月日、顔写真など、特定個人を識別できる情報です。

 

個人情報保護法は、全面施行されてから10年後の2015年に、初の改正が行われました。しかし、ICT技術の進化や環境の変化に即した改正が必要とされ、2015年以降は3年ごとに制度の見直しがされるようになり、「3年ごと見直し規定」と呼ばれています。2020年6月12日に最新の改正が行われ、2022年4月1日から施行されています。この改正個人情報保護法では、本人が請求できる範囲の拡大や企業側の責任範囲の追加などが行われたほか、新たに個人関連情報に関する記述が追加されました。個人関連情報とは、生存する個人に関する情報で、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないものを指します。

 

サードパーティクッキーは、単体では個人を特定するものではありませんが、個人関連情報と結び付けて取得される場合、クッキーも個人情報と見なされます。そのため、個人情報との紐付けによってプライバシーの懸念が生じ、ユーザーの同意が求められるようになりました。個人情報保護の観点から、クッキーを利用してユーザーの行動履歴を取得する際には、事前に適切な同意が得られる仕組みが重要となります。

サードパーティクッキー廃止のスケジュール

サードパーティクッキーの廃止が世界的なトレンドとなっていますが、ブラウザごとにその廃止スケジュールは異なります。

Appleのプライバシー保護措置: ITP

Safariを開発しているAppleは、2017年にプライバシー保護の一環としてITP 1.0を導入しました。

 

ITP(Intelligent Tracking Prevention)は、Safariブラウザにおいてサードパーティクッキーによるユーザーの行動データ収集を規制する仕組みです。

 

ITPはその後何度かアップデートを経て、2020年3月にリリースされたITPフルでは、サードパーティクッキーは完全にブロックされ、またファーストパーティクッキーについても発行から24時間で削除されるようになりました。これにより、Appleはユーザーのオンラインプライバシーを強化し、トラッキングに対する保護を強化しています。

Google Chromeのサードパーティクッキー廃止スケジュール

Googleは、Chromeブラウザにおけるサードパーティクッキーの利用廃止を2024年第1四半期から段階的に進める計画を発表しています。当初は2022年1月までにサードパーティクッキーの規制が予定されていましたが、2023年後半に延期され、その後さらに延期が発表されました。

Microsoft Edgeのサードパーティクッキーの取り扱い

Windowsの標準ブラウザであるMicrosoft Edgeでは、サードパーティクッキーを許可することができ、現時点では完全に廃止されていないことに留意してください。Microsoft Edgeはユーザーに柔軟性を提供し、サードパーティクッキーの許可や制限を調整できる状態を維持しています。異なるブラウザ間でのサードパーティクッキーの取り扱いには多様性があり、ユーザーは各ブラウザの設定に従って適切なオプションを選択できます。

サードパーティクッキー廃止の影響

では、サードパーティクッキーが廃止されると、どのような影響があるのでしょうか。

1. リターゲティング広告への影響

リターゲティング広告とは、リターゲティング広告は、ユーザーがウェブサイトを訪れた後に、そのユーザーに対して再度広告を表示するデジタル広告の手法です。具体的には、ウェブサイトを訪れたユーザーがサイトを離れた後、他のウェブサイトやプラットフォーム上でそのユーザーに向けて広告を表示することを指します。費用対効果が他の広告に比べて高いため、現在、多くの企業が利用しています。

 

サードパーティクッキーはリターゲティング広告の基盤であるため、廃止されると、リターゲティング広告の精度が低下し、企業はユーザーにより適切な広告を提供するのが難しくなります。

2. 広告効果の計測への影響

サードパーティクッキーの廃止により、コンバージョンやアトリビューションなどの広告効果の計測が難しくなります。広告主はユーザーの行動履歴を追跡できなくなり、広告の成果やROI(投資収益率)を正確に測定することが困難になります。

これらの変化はデジタルマーケティングにおいて課題を引き起こす可能性があり、業界は新たな手法や技術の導入に向けて動いています。プライバシー保護と広告主のニーズのバランスを取りながら、将来的なデジタルマーケティングの進化が期待されています。

ポストクッキー時代に備えたデジタルマーケティングの最適化

Chromeでも、2024年第1四半期からサードパーティクッキーが利用できなくなります。そのため、デジタルマーケターは、これまでサードパーティクッキーに頼っていたリターゲティング広告や広告効果計測の代わりになるものを模索する必要があります。

広告効果計測の代替手段

Googleはサードパーティクッキーの廃止に備え、精度の高い効果計測が可能な「Google Ads Data Manager」を提供予定です。これにより、広告主は計測の精度を保ちながらデータのプライバシー保護にも対応できるでしょう。

インテントデータの活用

サードパーティクッキーの廃止に伴い、インテントデータが注目されています。インテントデータとはWeb上で意図(intent)を持って起こした顧客の行動履歴データで、企業が自社で収集しているファーストパーティーデータ、パートナー企業から提供されるセカンドパーティーデータ、Web上の検索クエリや閲覧履歴などのサードパーティーデータに大別されます。

 

インテントデータを活用した「インテント広告」は、ターゲットの絞り込みやクリエイティブのパーソナライズ化が可能であり、従来の広告に比べてクリック率やコンバージョン率の向上が期待されます。

ファーストパーティデータ活用ツール

ファーストパーティデータを活用するツールとして、「Salesforce」や「DealPods」、「b→dash」が挙げられます。

 

「Salesforce」は、SalesforceがリリースしているCRMツールで、顧客との関係性を深め、単なる顧客をリピーターやファンに進化させる活動を支援することができます。

 

マツリカの「DealPods」は、バイヤーエンゲージメントSaaSの一つで、商談に必要なすべての情報を集約する共有サイトです。営業と購買者がコラボレーションすることで、より早くより確実に契約を実現します。

 

データXの「b→dash」は、SQLを使わずにノーコードで「データの取込・加工・統合・抽出・活用」を実現できるデータマーケティングクラウドシステムで、インテントデータを有効に活用して営業活動に繋げることができます。

 

これらのツールはCRMやバイヤーエンゲージメントをサポートし、顧客との関係を深め、営業活動を効果的に進めるのに役立ちます。

サードパーティデータ活用ツール

サードパーティデータまで広範に活用できるツールとしては、「Sales Marker」や「ZoomInfo」があります。

 

「Sales Marker」は、現時点で唯一の日本生まれのインテントデータを搭載したセールスインテリジェンスツールです。

 

「ZoomInfo」も、「Sales Marker」と似た機能を持つセールスインテリジェンスツールですが、こちらは海外ベンダーの製品となります。

 

これらのインテントデータを活用したセールスインテリジェンスツールは、営業活動の効率向上に寄与します。

さいごに

サードパーティクッキーの廃止に伴い、デジタルマーケティングは大きな変革を迎えます。リターゲティング広告や広告効果計測の難化が予測されますが、新たなアプローチやテクノロジーの導入により、プライバシー保護とマーケティングのバランスを取ることが求められます。

 

Googleが提供する「Google Ads Data Manager」などの新たな計測ツールや、インテントデータの活用に注力することが重要です。これにより、ターゲットの絞り込みやパーソナライズ化が可能になり、従来の広告手法に比べてクリック率やコンバージョン率の向上が期待されます。

 

ファーストパーティデータやサードパーティデータを活用するツールも多く存在し、顧客との関係性を深める手段として活用できます。これらの変革に柔軟に対応し、マーケティング戦略を見直すことが、ポストクッキー時代における成功の鍵となるでしょう。デジタルマーケターは新しい時代に向けて戦略の見直しとイノベーションに取り組むことが求められています。