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営業予算の達成は、企業の成長と安定した経営を支える重要な要素です。売上目標を達成するために、どのような戦略を立て、どのように実行していくべきかをご存知でしょうか?
本記事では、営業予算の基本的な概念から、予算達成のために効果的な施策までを解説します。
営業予算とは?
営業予算とは、営業部門に設定される売上目標のことです。企業は、この目標がどれだけ達成されたかを確認し、その結果に基づいて評価や査定を行います。
また、営業部門以外の部署にも予算が設定されており、目標達成に向けた活動が行われます。営業予算を設定することで、目標が明確になり、それを達成するための営業活動の管理や調整が可能になります。
営業予算と他予算の違いとは?
営業予算の定義は基本的には「売上予算」を指すことが多いです。
企業では売上予算のほかに「人件費予算」、「製造予算」、「マーケティング予算」などがあります。
これらの予算は、企業が持続的に成長するために欠かせません。企業は売上だけでなく、利益の拡大も重要であるため、すべての予算をしっかりと把握し、最適な運用サイクルを維持することが求められます。
営業予算の目安指標
営業予算の平均額は、営業担当者1人あたりの給与の3倍から20倍程度が一般的です。営業利益を得るためには、粗利、必要経費、人件費などのコストがかかります。
業種によって営業予算は大きく異なることがありますが、利益率が低くなると企業の経営が難しくなることを理解しておく必要があります。したがって、粗利や必要経費、人件費などを考慮して利益を算出し、適切な営業予算を設定することが重要です。
さらに、営業予算の設定においては市場の動向や競合他社の状況も考慮することが求められます。例えば、急成長している市場では高めの予算を設定し、競争が激しい市場ではコスト削減策を講じることが必要です。これにより、企業は持続的な成長を実現するための最適な営業戦略を策定できます。
営業予算の目標を立てるプロセス
営業予算や売上目標を立てる際のプロセスを4つの段階に分けて紹介していきます。
1.経営計画と事業計画の確認
企業は常に変化しており、新規事業の立ち上げや新しい人材の採用などが行われています。まずは目標設定期間の経営計画と事業計画を確認しましょう。
例えば、新規事業を開始する場合、その立ち上げには資金や人材、時間が必要です。この新規事業が軌道に乗るまでの間、他の事業でそれを補う必要があるかもしれません。または、売上目標を控えめに設定して新規事業に集中するという方法もあります。このように計画次第で必要な利益は変わります。
2. 必要利益の明確化
経営計画と事業計画に基づいて、必ず達成しなければならない利益を明確にしましょう。利益が不足すると経営が悪化し、最悪の場合倒産のリスクがあります。必要な利益が明確になったら、それに必要な売上を算出します。最低限の売上目標を設定し、それに成長期待を加味します。
前年度比でどれくらいの成長を目指すのか、具体的な数値目標を設定しましょう。成長を目指すなら、前年を上回る売上が望ましいです。
3. 過去データに基づく売上予測
前期や昨年のデータを参考にし、現状の見込みを精査して売上予測を立てます。予測は現実的に達成可能な数値で、設定した売上目標とはギャップが生じることが一般的です。このギャップを埋めるためには、新たな潜在顧客を見つけ出し、アプローチする必要があります。潜在顧客の発掘とアプローチ方法が、売上目標の達成に直結します。
過去データの分析には、CRM(顧客関係管理)ツールが役立ちます。CRMツールを利用することで、顧客情報を一元管理し、データに基づいた戦略を立てることができます。
4. 現実的な売上目標の設定と現場の合意
予測と売上目標のギャップを認識した後、現場の意見を取り入れることが重要です。希望や期待ばかりを追求すると、達成不可能な目標になる可能性があります。現実的に達成可能な目標かどうか、部門ごとの売上目標をチームや個人別に落とし込み、達成イメージを確認します。
売上目標達成までの具体的なプロセスをイメージしておくことも重要です。売上目標に対して必要な受注件数や見積もり数、案件数を明確にします。そして、目標達成を阻むボトルネックを特定し、その解決策を考え、検証し、改善サイクルを回す計画を立てましょう。
営業予算の決め方【トップダウン方式とボトムアップ方式】
予算の立て方には主にトップダウン方式とボトムアップ方式の2つがあります。それぞれの特徴とメリット・デメリットについて、以下に紹介します。
トップダウン方式のメリット・デメリット
トップダウン方式は、経営陣がまず予算目標を設定し、それを部門ごとに分配する方式です。この方法の最大のメリットは、迅速な決定が可能であることです。経営陣が一括して決定するため、予算編成がスピーディーに進みます。また、企業全体の戦略と整合性を持たせた予算編成が可能であり、経営戦略や市場環境の変化に柔軟に対応することができます。
しかし、トップダウン方式にはデメリットもあります。現場の実態やニーズと乖離した予算が設定されるリスクがあるため、現場の従業員のモチベーションが低下する可能性があります。経営陣の視点だけで予算が決定されるため、現場の意見が反映されにくいのです。
ボトムアップ方式のメリット・デメリット
一方、ボトムアップ方式は現場からの声をもとにして企業全体の予算を決める方式です。この方法のメリットは、各部門が自ら予算を編成するため、現実的で達成可能な数値が設定されやすいことです。現場の意見が反映されることで、従業員の納得感が高まり、主体的に取り組む意欲が増します。
しかし、ボトムアップ方式にも欠点があります。多くの意見を取り入れるため、予算編成に時間がかかることが一つの問題です。また、各部門が確実に達成できる目標を設定しがちであるため、成長意欲が抑えられ、企業の成長が鈍化する可能性があります。
ハイブリッド方式
企業によっては、トップダウン方式とボトムアップ方式を組み合わせたハイブリッド方式を採用することもあります。例えば、経営陣が大枠の戦略目標を設定し、各部門がその目標に基づいて詳細な予算を作成する方法です。これにより、戦略的一貫性を保ちながら、現場の実態に即した現実的な予算編成が可能となります。
このように、企業の規模や業種、経営環境に応じて、適切な予算編成の方式を選択し、柔軟に運用することが求められます。それぞれの方式の利点と欠点を理解し、状況に応じて最適な方法を採用することで、企業は持続的な成長と安定した経営を実現することができます。
営業予算達成のための取り組み
予算達成のための具体的な取り組みを3つ紹介します。これらの取り組みを実行することで、企業は設定した予算目標を達成し、持続的な成長を実現することができるでしょう。
1.効果的なリードジェネレーション
1つ目に紹介するのは、デジタルマーケティング、SEO(検索エンジン最適化)、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディアマーケティングなどを活用して、新しい顧客を見つけることです。
特に、ターゲットとなる顧客層を明確にし、それに合ったメッセージを発信することが重要です。また、リードマグネット(無料資料やウェビナーなど)を提供することで、見込み客の関心を引き、連絡先を取得する方法も効果的です。
表:リードジェネレーション施策の効果比較例
営業マンが営業予算を達成するためには新規顧客の開拓は必須となってくるでしょう。そこで過去記事の「新規開拓営業のコツや方法を解説|種類と成約率を上げる方法を紹介」を振り返ってみましょう。新規開拓の種類から具体的な方法までを細かく解説しています。
2.顧客関係管理(CRM)の強化
2つ目に紹介するのはCRMの強化です。CRMシステムを使って、顧客の情報を一元管理し、顧客のニーズや行動を把握します。これにより、顧客満足度を向上させ、リピート顧客を増やします。
・CRMツールの導入
ある中小企業がSales Markerを導入し、顧客データの一元管理を開始しました。これにより、顧客の購買履歴や問い合わせ履歴を詳細に把握できるようになり、顧客対応の質が向上しました。Sales Markerを活用して、顧客の行動を分析し、パーソナライズされたマーケティングキャンペーンを実施しました。
・自動化機能の活用
CRMシステムの自動化機能を活用して、定期的なフォローアップメールや誕生日のお祝いメッセージの自動送信を実施することで顧客とのエンゲージメントが高まり、顧客満足度が向上を見込めます。
・データ分析によるインサイト
CRMに蓄積されたデータを活用し、顧客の購買パターンや嗜好の分析が可能になります。これにより、顧客ごとのニーズに合わせた商品提案が可能になり、クロスセルやアップセルの機会を増やすことができます。また、顧客のロイヤルティプログラムを導入し、リピート購入の促進も期待できます。
表:CRMシステム導入前後の比較
3.インセンティブプログラムの導入
最後に紹介するのは「インセンティブプログラムの導入」です。インセンティブを営業目標を達成した営業担当に対して与えることで、営業活動の活性化を図り、売上目標の達成を促進します。インセンティブプログラムの設計の例としては次のような方法があります。
・ 成績に基づくボーナス
営業成績に応じてボーナスを支給するプログラムです。達成率に応じて段階的に報酬額を設定することで、営業スタッフの努力を促します。
例)目標達成率100%:基本ボーナス
目標達成率120%:基本ボーナス + 20%
目標達成率150%:基本ボーナス + 50%
・トップパフォーマー賞
月間、四半期、年間ごとに最も優れた営業成績を上げたスタッフに賞を授与します。賞金や特別な報酬が用意されます。
例)月間トップパフォーマー:現金ボーナス、特別休暇、ディナー招待
年間トップパフォーマー:海外旅行、豪華賞品
・チームインセンティブ
個人ではなくチーム全体で目標を達成した場合に支給されるインセンティブです。チーム全員の協力と努力を促進します。
例)チーム目標達成:チーム全員に現金ボーナス、チームビルディングイベント(旅行、ディナー)
・特定目標達成インセンティブ
特定の製品やサービスの販売促進を目的としたインセンティブです。キャンペーン期間中に目標を達成した場合に報酬が支給されます。
例)新製品販売キャンペーン:期間中に新製品を10個以上販売した営業スタッフに特別ボーナス
・紹介プログラム
既存顧客からの紹介で新規顧客を獲得した場合に報酬を支給するプログラムです。顧客紹介による売上増加を促進します。
例)新規顧客紹介:紹介で契約が成立した場合、紹介元の顧客と営業スタッフの両方にボーナス
これらのインセンティブプログラムを導入することで、営業スタッフのモチベーションを高め、営業目標の達成に向けた努力を一層促進することができます。
本記事のまとめ
営業予算の達成は企業の成長と安定した経営に不可欠です。本記事では、営業予算の基本概念から具体的な達成施策までを解説しました。営業予算とは営業部門に設定される売上目標を指し、企業はこの目標達成度を評価し、その結果に基づいて営業活動を管理します。
営業予算の設定により、目標が明確になり、営業活動の効率的な管理や調整が可能となります。
営業予算は主に「売上予算」を指し、他には「人件費予算」「製造予算」「マーケティング予算」などが存在し、それぞれの予算は企業が持続的に成長するために必要な活動をサポートするために設定されます。
営業予算の平均額は、営業担当者1人あたりの給与の3倍から20倍程度が一般的で、業種によって異なりますが、粗利や必要経費、人件費などを考慮して適切な営業予算を設定することが重要です。
予算設定の方法には「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」があり、それぞれにメリットとデメリットがありますが、状況に応じて「ハイブリッド方式」を採用することも有効です。
最後に、営業予算達成のための具体的な取り組みとして以下の3つを紹介しました。
・効果的なリードジェネレーション
・顧客関係管理(CRM)の強化
・インセンティブプログラムの導入
これらの施策を組み合わせて実行することで、企業は設定した予算目標を達成し、持続的な成長を実現できます。企業が営業予算を達成するためには、明確な目標設定と戦略的な施策の実行が不可欠です。
本記事で紹介した方法を参考に、自社の営業活動を見直し、最適なアプローチを導入することで、より高い成果を上げることが期待されます。