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インテントデータの活用は、営業リソース不足を解消する手段となり得るのか?

#インテントデータ

事業を成長させるために、売上を立てることは必要不可欠な要素のひとつです。

しかし、多くの企業においては、売上目標を達成しつづけることは容易ではありません。「もっと売上をあげるためにはどうすればよいのか?」という悩みを持つ経営者や営業責任者の方は多いのではないでしょうか?

売上目標が未達になる場合、その理由は多岐にわたりますが、大きな原因の一つとして「営業リソースが足りない」という課題が挙げられます。

BtoB事業の場合、お客様がサービスを購入する経路はほぼ「直販」あるいは「代理店販売」になるため、売上は営業のキャパシティに大きく依存すると言えます。

必要な売上を達成するためには、もっとお客様と商談をしなくてはならないのに、営業が足りない。

この不足分を補う手段として真っ先に思いつくのは、不足分を採用するか、代理店の拡大を行うかです。

しかし実際は、頭数を単純に増やしただけで解決するほど簡単な問題ではなく、また、特にスタートアップや中小規模の事業者の場合は採用自体が難しかったりもします。

そこで注目すべきが「営業の生産性を高める」ことです。本記事では、インテントデータの活用が、営業の生産性向上に結びつくコスト削減や効率化をどのように実現するのかをご紹介します。

営業リーダーの67%効果を実感するインテントデータ活用

米国の先進事例「Zoominfo」

インテントデータと言えばまず最初に名前が挙がるのが、米国Zoominfo Technologies社が提供する「Zoominfo」というサービスだと思います。

「Zoominfo」は、2020年夏に米株式市場に上場したビジネスインテリジェンス・プラットフォーム サービスです。ブルームバーグがまとめたデータによると、”同社と同規模かそれ以上の企業の中では、ここ10年で最大の米取引初日の上昇率となった”と発表されており、世界中の注目を集めました。

全世界で3万社を超える企業が利用するZoominfoが公開している導入企業の調査レポートでは、67%の営業リーダーがZoominfoの導入後すぐにトップラインの収益が増加したと回答したとされています。営業担当者がZoominfoを利用することで、見込み客の開拓にかかる時間の半減、架電やメールでの接続率の倍増に成功し、売上が増加したという内容でした。

<出典:Best Practices for Accelerating the Sales Proccess.
https://www.zoominfo.com/resources/best-practices-accelerating-sales-process”>

インテントデータとは?

TOPO(現在はGartner)の調査によると、米国では62%の企業が一つ以上のインテントデータソリューション(上述のZoominfoのようなサービス)を利用しているとされています。そもそもこの「インテントデータ」とは何でしょうか? 

インテントデータとは、特定の対象(企業)が、今どのような課題やニーズを持っているのか、どのようなソリューションの購入を検討しているのか、などの興味・関心を分析し、購買意図を可視化したデータです。

Web検索クエリや特定のWebサイトの閲覧履歴などの、Web上に存在する何十億もの行動履歴データを取得し、対象の意図(インテント)を汲み取ることを可能とするセールスインテリジェンスやビジネスインテリジェンスとよばれるツールを利用することで、インテントデータの活用が可能となります。現在、日本で提供されているサービスの中では Sales Marker が該当します。

インテントデータをBtoB営業に活用することで得られる効果は様々ですが、Zoominfoの事例でも見られるように、特に多く挙げられる内容が以下のようなものになります;

・新規開拓営業のアポ獲得率が向上した・コールドコール時の受付突破率(担当者への接続率)が向上した

・BDRのリスト作成・それに付随する調査コストが削減できた

・受注までのリードタイムが短縮された

インテントデータにより実現する営業の生産性向上

高度なターゲティングによる生産性向上

「営業は、稼働時間の約50%を生産性のない見込み客開拓に浪費している」と言われた時、完全に否定しきれる事業者はどれほどいるでしょうか?この数値は、米国の調査によるものですが、実は日本でもそう大きく変わらないのではないかと考えられます。日本企業の生産性が低いというデータがあることを考えると、もっと悪い数字かもしれません。

例えば、新規顧客を開拓すべくアウトバウンド営業を行う時のことを思い浮かべてみてください。過去の受注実績や商談化実績から確度の高そうな属性を分析し、それと共通する企業のリストを作成し、上から下まで数千件もの企業にひたすら架電をしていませんか? その場合、どの程度成果に繋がる結果(生産性)が得られているでしょうか?

アプローチすべきターゲットの抽出と優先順位付けが上手くできていない、ということが営業の非効率さの要因のひとつであることは明らかです。

インテントデータが活用できる場合、この状況が大きく変化します。

インテントデータは、ターゲットとなる企業のWeb検索行動履歴データを可視化することが可能となります。つまり、今自社サービスに関連することを検索している企業を見つけ出すことが可能ということです。

インテントデータが活用できることで、「今、自社サービスに興味がある、もしくはニーズがある可能性が高い」企業に絞り、それら企業に優先的にアプローチをすることができるようになります。ニーズがあるかどうかもわからない既存顧客と類似する属性を持つだけの企業にアプローチしていた状況と比べると、インテントデータ活用によって営業ひとりあたりの生産性が飛躍的に高まることは、間違いありません。

見込み客の興味・関心事に合ったアプローチによる生産性向上

インテントデータが、ターゲットとなる企業のWeb検索行動履歴データを可視化できるということは、つまり彼らの興味・関心事や課題などが推測できるということです。アプローチする前に、対象となる企業が何を欲しているのかがわかっていれば、適切な情報を提供することが可能となります。当然アポが取れる可能性も高くなります。

ひとつ、とてもわかりやすい実例がありますので、紹介します。

インテントデータを活用できる日本のサービス「Sales Marker」を利用しているクリエイティブ制作を受託する企業の事例です。

同社は、Sales Markerを活用し「動画制作を業務委託したい」というニーズを持つ企業を、Web検索行動履歴データを参考にして抽出していました。さらに、「テレビCM」「ゲーム」「IP」などいくつかのキーワードを掛け合わせて追うことで、制作したい動画の用途を推測し、初回アプローチ時や商談準備の効率を飛躍的に向上させることに成功しています。

とある大手ゲーム会社が「IPタイトルの扱いに対して知見がある制作会社」を探している可能性が高いことを把握した上でアプローチをした際、「ちょうどそういう制作会社を探していたところで、Web検索だと見つからなくて困っていたので助かった」と、営業をしたこと自体を感謝され、そのまま1週間ほどで1000万円を超える大型案件を受注しました。

これはとても成功した事例かもしれませんが、インテントデータを使った時とそうでないときを比べると、インテントデータを使った時のほうが受注獲得までのリードタイムが短縮でき、営業の生産性が高まるということは間違いないことに同意していただけると思います。

セールスインテリジェンス活用によるコスト削減

インテントデータの活用は、セールスインテリジェンスの活用とほぼイコールと言えます。なぜなら、個々の企業が自前でWeb検索行動履歴などのサードパーティーデータを取得・解析することが現実的ではないからです。

ここまで、インテントデータそのものの活用による生産性向上についてご紹介してきましたが、次はセールスインテリジェンスという観点からお話をします。

セールスインテリジェンスの明確な定義の所在は不明ですが、米国最大級のBtoB向けソフトウェアサービスのレビューサイトG2で、セールスインテリジェンスカテゴリに掲載されるための条件を参考に、ここでは以下のような条件を満たすものと定義します。

・企業データベースを持っており、その中からカスタム条件での検索に基づき潜在顧客を特定する機能、またはトリガーとなるイベントに基づき潜在顧客の予測・インサイトを通知する機能を搭載していること。

・直通の電話番号やメールアドレスなど、潜在顧客の正確な連絡先情報が提供されていること。

・セールスおよびマーケティングソフトウェア、分析ツール、データ管理ソフトウェアなどとの連携が可能なこと。

・提供するデータに、企業が生成したデータを組み合わせることができること。

<What is Sales Intelligence Software (G2) から抜粋>

 

インテントデータは、ひとつめに挙げた条件を満たすセールスインテリジェンスの中の一つの機能です。例えば「過去2週間以内に、自社サービス名をWebで検索した企業」というカスタム条件で潜在顧客を特定することや、「特定の競合サービス名でWeb検索を行った」という条件をトリガーにして該当した企業をニーズが顕在化している潜在顧客として通知することなどです。この機能を他の機能と合わせて活用することで、営業コストの削減、生産性の向上に対してより一層効果を発揮します。

ニーズがある企業のキーマンに直接アプローチ

インテントデータ活用で確度の高いターゲットを抽出し、的確なセールストークの準備までできても、担当者に接触できないことには意味がありません。ここで、セールスインテリジェンスに搭載されている「直通の電話番号やメールアドレスなどの連絡先情報の提供」の出番です。

従来のアウトバウンド営業では、企業の代表電話番号や、お客様用のお問い合わせフォームなどに対して営業をかけている場合がほとんどです。そして多くの場合、受付を突破できず、担当者に繋がれないまま営業が失敗しています。この課題を解決できるのも、セールスインテリジェンスの大きなメリットです。

ニーズがある可能性が高い企業のキーマンにLinkedInで直接DMを送ることで、アウトバウンド営業の商談獲得率が20~30%の水準をキープした企業の事例や、販売する自社サービスの導入主体となる部署の直通電話番号への架電、役職者へのDM郵送などの手段で担当者への提案機会の獲得数が代表電話へのアプローチ時より3倍増加した事例など、高い効果を発揮した事例が数多くあげられています。

顧客情報を一元管理できることによるコスト削減

営業の生産性向上を強く意識している事業者の方の場合、すでに営業にまつわる多くの業務のIT化を実施済みかもしれません。その場合、新たなサービスを導入することで、複数ツールを行き来しながら業務をしなくてはいけない面倒な状況を生み出すことを心配されているかと思います。

営業効率を高めてコスト削減・生産性向上をするつもりが、かえって非効率な環境を生み出したとあっては、本末転倒です。その点、セールスインテリジェンスは、営業・マーケティングソフトウェアや顧客管理システムなどとの連携が可能ですので、正しく活用すれば業務効率は飛躍的に向上させられます。

連携の仕様に関してはもちろんサービスごとに異なりますので、ここではSales Markerと顧客管理システムの連携を例に挙げてみます。

Sales Markerでは、インテントデータなどを活用することで特定の条件を満たす見込み客を発見した際に、顧客管理システムに自動で見込み客を登録させることができます。

また、登録時に、企業データベース内の任意の情報も自動で取り込むことが可能です。つまり、営業担当者は、アプローチすべき見込み客を見つけるためにわざわざSales Markerにログインする必要はなく、また、見込み客の企業情報や連絡先、その他の企業や顧客に関連する情報を調べるためにSales Markerを参照する必要もありません。顧客管理システム「だけ」を使って、セールスインテリジェンスを利用する事で得られるメリットを享受することができます。

インテントデータの活用で、営業の人数を増やさず売上を伸ばせる

インテントデータの活用は、営業リソース不足を解消する手段となり得るのか? という問いに対しては、YESと答えられます。インテントデータを活用することで、これまで営業1人で獲得できていた商談件数の2〜3倍、時には10倍の件数を獲得することができるようになるからです。

インテントデータを活用する多くの企業の実績から、売上目標に対して必要な商談件数を確保するまでにかかるコストが大幅に削減されることがわかっています。ニーズがある可能性が高い企業にアプローチができることで、アポ獲得率が向上するため、営業はより少ない時間でより多くの「顧客への提案機会」を得ることができるようになります。顧客に会って提案できる回数が増えれば、売上を作れる機会も向上します。

また、インテントデータは企業ごとの検索行動を可視化することができるため、見込み客のニーズを高い精度で推測することが可能です。したがって、営業は見込み客が「欲しい」と思っているものがわかった上で的確なアプローチをすることができ、アポ獲得率の向上はもちろん、質の高い商談を行うことができるようになります。

インテントデータを活用するために利用することになるセールスインテリジェンスサービスには、インテントデータ以外にも、企業の部署構成、役職者の名前、役職者へのLinkedIn DM、その他様々な情報を提供している他、顧客管理システムと連携することによる顧客情報の充実・一元管理機能など、営業の生産性を向上させる多くの機能が搭載されています。

営業のリソース不足をテクノロジーで補いたいと考えている場合、セールスインテリジェンスの検討をオススメします。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

小笠原 羽恭

CrossBorder株式会社 代表取締役 CEO。
新卒で野村総合研究所に入社後、基幹システムの開発・PM・先端技術R&D・ブロックチェーン証券PFの構築・新規事業開発に従事した後、コンサルティングファームに転職し、経営コンサルタントとして、新規事業戦略の立案・営業戦略立案・AIを活用したDXなどのプロジェクトに従事。その後、グローバル規模での市場動向調査・営業戦略立案・事業戦略立案をデータとAIで効率化・高度化することを目指してCrossBorder株式会社を創業。代表を務める。国内初のインテントセールスを実現するSales Markerを提供。Forbes 30 Under 30 Asia Listノミネート。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)の協議員。