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「営業組織全体の生産性を向上したい」
「中・長期的に売上を上げたい」
このようなお悩みを持つ企業も多いのではないでしょうか?
営業で継続した成果を上げるためには、営業組織に属している担当者全員が一定の成果を創出しなければいけません。
そこで注目を集めているのが「セールスイネーブルメント」という営業力を強化する手法です。
本記事では、セールスイネーブルメントの概要・実現への手法・事例について解説します。
セールスイネーブルメントとは?
セールスイネーブルメントとは、営業組織全体の営業の標準化を目指す取り組みです。
いわゆる、営業担当者の成果や能力を向上させ、営業担当者1人1人が成果を創出できる営業になることです。
例えば、A社とB社でそれぞれ5人ずつ営業担当者が在籍しているとします。
- A社では5人のうち2人だけ営業売上が良く、全体での営業売上が100万円
- B社では5人が平均的に売上を出しており、全体での営業売上が100万円
この場合、後者の方が営業組織力は強いと言えます。
なぜなら、A社では2人の内どちらか1人が欠けてしまうことで継続的な成果の創出が難しくなるからです。
セールスイネーブルメントは営業担当者全員が一定の成果を創出できるようになるための取り組みです。
セールスイネーブルメントと人材育成の違い
セールスイネーブルメントは人材育成と混同されることがありますが、明確な違いがあります。
セールスイネーブルメントは営業組織全体での標準化、人材育成は営業担当者1人1人のスキルアップのための取り組みです。
人材育成は研修やOJTの実施を中心としますが、個人を対象に行います。 営業スキルの向上は個人の能力や経験によって変わり、結果的に営業担当者1人1人の能力差にバラつきが生じます。
しかし、セールスイネーブルメントは組織全体の営業担当者全てを対象に効果検証・改善を繰り返し仕組み化します。そのため、全体的な営業力の強化が図れます。
セールスイネーブルメントを実現するための手法
セールスイネーブルメントは下記4つの手法で実現します。
- コンテンツ
- プロセス
- プログラム
- データ
コンテンツ
セールスイネーブルメントにおけるコンテンツは、顧客に提示する資料や提案書などの社外向けの資料や、ノウハウ資料や研修資料など社内向けの資料を統一化し業務の標準化を図ります。このコンテンツには大きく2種類に分けられます。
1つ目は顧客に提案する資料や動画です。
顧客に自社の商品やサービスを紹介・提案する際に受注へと繋がる資料や動画は内容によって大きく異なります。
資料や動画は成果を創出できている内容に統一することで担当者全員の成果にバラつきが生じにくくなります。
2つ目は社内向けの資料や動画によるノウハウです。
営業担当者がそれぞれ異なった営業ノウハウに関する資料を使用していると、営業活動におけるスキルや成果にはバラつきが生じます。
担当者が使用する営業ノウハウがそれぞれの担当者専用にカスタマイズされていけば、より担当者によって大きな差が生じるでしょう。
セールスイネーブルメントを実現するためには、成果を出している営業担当者の営業資料や営業ノウハウを組織全体に共有していくことで個人の成果やスキルの差を解消できます。
プロセス
営業活動におけるプロセスを営業組織内で標準化することも重要です。
それぞれが自己流の営業活動を行なっていては成果に差が生じることは避けられないでしょう。
成果を出している営業担当者の具体的なアクションのプロセスを分解して共有できれば、セールスイネーブルメントを実現できます。
例えば「顧客へのヒアリング時に絶対聞くこと」や「テレアポをする際のタイミング・時間帯」など、それぞれの営業活動におけるステップで「やるべき行動」や「具体的なアクション方法」を共有・浸透させることで営業担当者はやるべき行動が明確化され、組織全体での成果向上が見込めます。
プログラム
セールスイネーブルメントにおけるプログラムとは、営業活動における営業資料やノウハウをまとめた学習プログラムを営業組織全体に共有することです。
営業担当者全員が同じプログラムを学習することで、営業組織全体での能力が向上します。
また、プログラム作成には営業担当者の中で成果を常に創出できている担当者の知識・ノウハウ・具体的な営業行動をプログラムとしましょう。
データ
上記3つに加えて営業担当者1人1人の営業アクションや営業成果を数値化したものをデータ化し可視化することが重要です。
データ化を行うのは「なぜ成果を創出できないのか」「どこが改善するポイントなのか」それぞれの営業活動における課題を明確化できます。
いくら同じコンテンツを共有しプロセスを明確化、学習プログラムを受けたとしても個人の経験や能力によって差が出るでしょう。
そのため、1人1人がそれぞれの明確化した課題に対して対策を打つことでやるべきことが明確になり、営業組織全体の営業の標準化ができます。
セールスイネーブルメントの成功事例
上記手法を踏まえてセールスイネーブルメントの成功事例下記4つを紹介します。
- コンテンツ:東芝テック
- プロセス:プレコフーズ
- プログラム:Sansan
- データ:セレブリックス
コンテンツ:東芝テック
東芝テック株式会社では、テレワークで営業活動を実施していますが、オンライン営業は対面営業に比べて商品やサービスの魅力が伝わりずらく、独自の営業手法になるため営業成果にバラつきが生じます。
そこでセールスイネーブルメントの実現のために、
- セールスイネーブルメントツールの導入
- 営業担当が商品を紹介し、資料をダウンロードできる動画の作成
を行いました。
ツールを活用することでデータやノウハウを蓄積し取り入れた動画を活用することで、営業トークや提示資料、いわゆるコンテンツの均一化を図り営業組織全体での営業活動の標準化が達成しました。
プロセス:プレコフーズ
株式会社プレコフーズは全国5つの営業所を有しますが、各営業所で営業プロセスが異なり営業成果のバラつきが課題となっていました。
そこでSFAツールを導入。営業手法を一元的に管理でき営業所で成果が出ている営業プロセスを各営業所に共有することで営業活動の標準化に成功、新規顧客開拓数が前年の2.2倍を記録しました。
プログラム:Sansan
Sansan株式会社は新しいメンバーのオンボーディング(職場や環境に慣れてもらうこと)を進める中で、育成がうまくいかず営業1人あたりの生産性が低下する課題がありました。
そこでオンボーディング強化を目的にセールスイネーブルメントの取り組みを開始しました。
具体的にはSFAデータの再定義と再整備を行い、営業活動のデータ入力を定着させました。 その後、営業メンバーが営業の基本の流れの理解や、案件プロセスの改善すべきポイントの把握を行いました。
こうしたオンボーディングを強化させるべきプログラムを構築し、営業組織全体で共有を行うことで組織全体での育成を強化し、即戦力として生産性の向上に成功しました。
データ:セレブリックス
株式会社セレブリックスは営業支援という無形サービスを提供しており、仕組みを作成しなければ営業担当者1人1人でスキルや提案内容にバラつきが生じます。
そのために、「営業活動のデータ化」「営業データの定量分析・定性分析」「営業課題の設定と解決策の特定を行い、営業成果を具体的な数値で判断し、営業担当者1人1人のやるべきことを明確化しました。
また、分析したデータは研修やトレーニングメニューにも採用されており、誰もが一定以上売れる営業の仕組みを構築しています。
まとめ
本記事では、セールスイネーブルメントの手法や成功事例について解説しました。
セールスイネーブルメントを成功させるには、
- コンテンツ
- プロセス
- プログラム
- データ
の4点の手法を理解し取り組むことで営業組織全体で1人1人が成果を創出できる営業の標準化が可能になります。
ぜひ本記事を参考セールスイネーブルメントの導入を成功させましょう。