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「思うように営業成績が上がらず、SPIN営業に取り組んでみたいがやり方がわからない」
「SPIN営業の流れの具体例を知って、営業活動で実践したい」
営業担当者の方のなかには、上記のような悩みがある方もいるのではないでしょうか。
本記事では「SPIN営業の概要」と「具体例を交えたSPIN営業の流れ」を中心に解説します。SPIN営業の具体例を参考に実践していただける内容のため、ぜひ最後までご覧ください。
SPIN営業とは?
SPIN営業とは、4つの質問を通じて顧客の潜在ニーズを引き出す「SPIN話法」を取り入れた営業方法です。
1988年に出版されたイギリスの行動心理学者ニール・ラッカムの著書「SPIN Selling」において提唱されました。「SPIN Selling」は、SPIN話法を企業がどのように活用できるかについて焦点を当てたビジネス書籍であり、ベストセラーの1冊として認知されています。
SPIN話法は「Situation」「problem」「Implication」「Need-payoff」の4つの質問で構成されています。
上記の質問順に話を展開することで、顧客が自らの潜在ニーズに気付くため商談や受注などにつながりやすい営業方法です。
SPIN営業が活躍する場面
SPIN営業が活躍する場面は、おもに次の2つです。
- テレアポ
- 商談
場面ごとに活躍する理由を解説します。
テレアポ:商談につながりやすい
テレアポでSPIN営業を活用すると、商談につながりやすくなります。
テレアポでは一方的に話すのではなく、相手の課題や状況を聞き出す必要があります。SPIN営業を取り入れれば、S→P→I→Nの順に沿って会話が展開できます。相手の状況が把握できるうえに提案まで可能となるため、商談につながりやすくなります。また、テレアポの段階でヒアリングも済んでいるため、その内容をもとに商談を組むことも可能です。
テレアポにSPIN営業を取り入れることで、商談の獲得だけでなく「商談の場での効果的な提案」まで可能となります。最終目標である「受注」にもつなげられることから、SPIN営業は、テレアポで大いに活躍する営業方法です。
商談:潜在ニーズを掘り起こせる
商談でSPIN営業を活用すると、顧客の潜在ニーズが掘り起こしが可能となります。
顧客は自身の顕在ニーズは自覚しているものの、まだ気づいていない潜在ニーズも存在します。SPIN営業では、相手の状況や問題、その問題を解決する重要性を感じてもらえるため、商材によって顕在ニーズの解決は難しいと感じていても、潜在ニーズを自覚することで商材の価値を感じてもらえる可能性があります。
また、顧客自らが会話の流れで自覚することで、自発的に課題が意識できます。一方通行な営業ではなく双方向のコミュニケーションとなるため、顧客からの信頼も得やすい営業方法です。
SPIN営業の流れ・具体例
SPIN営業は以下の4つで構成されており、順番に質問することで効果を発揮します。
- Situation Questions(状況質問)
- problem Questions(問題質問)
- Implication Questions(示唆質問)
- Need-payoff Questions(解決質問)
Situation Questions(状況質問)
まずは、顧客の現状を把握するために状況質問(Situation Questions)を行います。ここでは、自社商材につながる内容を質問し、関連性のない質問は避けましょう。不快感・不信感を与える可能性があるため、状況質問は端的に済ませましょう。
状況質問の具体例は次のとおりです。
- 御社の営業プロセスでは、成約までのフローにどのようなステップがありますか?
- 〇〇の管理で使用しているツールはありますか?
- 〇〇部署が直面している課題のなかで、特に顕著なものはありますか?
problem Questions(問題質問)
次に、顧客が抱える課題を明確にするために問題質問(problem Questions)を行います。顧客自身が問題を認識できるように、潜在ニーズを掘り起こすことを意識しましょう。また、回答しやすいように「はい」「いいえ」で回答できる内容にしましょう。
問題質問の具体例は次のとおりです。
- 成約までのプロセスで、情報の見落としや進捗管理に困っていませんか?
- 使用しているツールでのデータ入力や管理に手間はありませんか?
- プロジェクト管理に関して不安はありませんか?
Implication Questions(示唆質問)
次に、顧客に問題解決の重要性を認識してもらうための示唆質問(Implication Questions)を行います。問題質問で明らかになった問題を放置することで、どのようなトラブルが生じる可能性があるかを理解してもらいます。ここで問題解決の重要性を感じてもらうことで、商談や受注につながりやすくなります。
示唆質問の具体例は次のとおりです。
- 情報の共有漏れが成約率低下の原因になっていませんか?
- ツールにかかる手間が〇〇部署の生産性を下げていませんか?
- プロジェクト管理がスムーズにいかない場合、プロジェクトの遅延や品質低下などにつながる恐れはありませんか?
Need-payoff Questions(解決質問)
最後に、浮き彫りになった問題を解決する方法として、自社の商品・サービスに興味を持ってもらうための解決質問(Need-payoff Questions)を行います。「問題が解決できたらどうなるか」をイメージできる内容を意識し、自社商材で解決できない問題の想起につながる発言は避けましょう。
解決質問の具体例は次のとおりです。
- 当社の〇〇を使用することで、全てのチームメンバー間で情報がリアルタイムに共有されるため、結果として成約率向上につながると思いませんか?
- ツールの操作にかかる手間が〇〇部署の生産性を下げているとすれば、誰でも操作しやすい当社の〇〇ツールに切り替えることで、作業効率が大幅に改善し、部署全体の生産性が向上すると思いませんか?
- 当社の〇〇を導入することで、プロジェクトの進捗管理が容易になり、マネージャーは調整しやすくなるため、結果としてプロジェクトの成功率が高まるのではないでしょうか?
SPIN営業を成功させるコツ
SPIN営業を成功させるコツは次の3つです。
- 事前準備をする
- 資料を活用する
- 会話内容をメールで送付する
1. 事前準備をする
SPIN営業を行う際は「顧客に関する情報収集」や「質問項目の整理」などの事前準備を行いましょう。
SPIN営業では、会話のなかで質問しながら顧客の潜在ニーズを掘り起こします。特に「状況質問(Situation Questions)」や「問題質問(problem Questions)」では、顧客の現状や問題に関して質問します。情報が不足していると顧客からの共感が得られず、問題解決の重要性を認識してもらうことが難しくなります。
また「示唆質問(Implication Questions)」では「自社商材で解決できる問題」を解決する重要性を感じてもらう必要があるため、商談・受注を意識した内容にしなければなりません。よって質問内容にも工夫が必要なため、事前に質問項目を整理し、次の「解決質問(Need-payoff Questions)」にスムーズに移れる質問をしましょう。
2. 資料を活用する
SPIN営業は、ヒアリングに重きをおいた営業方法のため、テクニックだけでなく経験も必要です。内容さえ知れば実践できるようになる方法ではないため、営業資料に質問フォーマットを用意し、その順番に質問していくとテクニック・経験の有無にかかわらず、SPIN営業が実践できます。
たとえば「自社のCRMツールを提案したい営業担当者」の場合、以下のようにフォーマット通りにSPIN営業を進めるとよいでしょう。
1:Situation Questions(状況質問)
現在、顧客情報の管理にはどのようなツールを使用していますか?
2:problem Questions(問題質問)
顧客とのコミュニケーション履歴や取引内容の管理に手間がかかっていませんか?
3:Implication Questions(示唆質問)
顧客情報の管理が不十分であることが、営業機会・売上の損失に影響していませんか?
4:Need-payoff Questions(解決質問)
当社のCRMツールを利用することで、顧客とのコミュニケーション履歴が一元管理できるため、営業チームがより戦略的にアプローチできるようになりませんか?
ただ、この3,4にたどり着くまでの質問が難しいと思います。そこで、1,2をスムーズに引き出すために以下のように質問項目を資料に組み込みます。
資料に組み込むことで、自然に質問ができるため、比較的だれでもSPIN営業が実践しやすくなります。しかし、3,4の示唆質問と解決質問は聞き方にテクニックが必要となるので注意しましょう。
3. 会話内容をメールで送付する
商談や受注につながったとしても、関係を維持するには顧客からの信頼を得る必要があります。そのため顧客とやり取りしたのちに、SPIN営業で得た会話内容をメールで送付しましょう。
商品・サービスだけでなく、営業担当者の評価も顧客の選択基準となります。会話内容をメールで送付すれば、内容を再確認できるうえに好印象を与えることが可能です。お礼と共に会話内容を記載したフォローメールを送付し、顧客と良好な関係を築きましょう。
まとめ
SPIN営業は、双方向コミュニケーションによって潜在ニーズを顧客自身に認識してもらえます。一方的な営業トークにならないため、顧客からの信頼が得やすく、商談や受注につながりやすい営業方法です。
本記事で紹介したSPIN営業の流れを参考に、顧客の潜在ニーズが掘り起こせる対話を実践しましょう。