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- ABM(Account Based Marketing)とは
- ABMと一般的なマーケティングの違い
- ABM(Account Based Marketing)の関連用語
- キーマンレター
- インテントデータ
- Tier(ティア)
- BDR(Business Development Representative)
- データドリブン
- ABM(Account Based Marketing)が注目される背景
- 1.SFAやCRM、MAといったマーケティングツールの発展
- 2.事業部制による機会損失
- 3.競争の激化と顧客獲得コストの上昇
- ABM(Account Based Marketing)導入のメリット
- ROIの向上が期待できる
- PDCAの高速化
- アプローチシナリオを策定しやすい
- ABM(Account Based Marketing)導入のデメリット
- コストとリソースの負担を検討する
- 結果が出るまで時間がかかる
- ターゲットの選定ミスのリスク
- ABM(Account Based Marketing)実践の手順
- 【手順①】ターゲットリストの作成
- 【手順②】ターゲット企業のニーズや課題の把握
- 【手順③】カスタマージャーニーマップの作成
- 【手順④】コンテンツ作成とアプローチ方法の検討
- 【手順⑤】アプローチの実践とPDCAサイクルの回転
- ABM(Account Based Marketing)を成功させるポイント
- 1.ターゲットアカウントの精緻な選定
- 2.部門間の連携強化
- 3.パーソナライズされたアプローチの徹底
- 本記事のまとめ
アカウントベースドマーケティング(ABM)は一般的なマーケティング手法とは異なり、ターゲットとする企業ごとにアプローチをカスタマイズし、営業とマーケティングが協力して精密な戦略を展開します。
これにより、見込み顧客との関係性を強化し、より高い成約率を目指すことができます。本記事では、ABMの基本的な概念やその導入メリット、実際の運用方法について解説していきます。
ABM(Account Based Marketing)とは
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、特定の成約に結びつきやすい企業や団体(アカウントや顧客)を設定し、そこに焦点を当てた戦略的な営業アプローチ・マーケティング手法です。
通常のマーケティングが広くターゲット層にリーチしようとするのに対し、ABMでは事前に選定したアカウントに対して、個別にパーソナライズしたメッセージや施策を展開します。この手法は、高いリターンが期待できる対象にリソースを集中させることで、効果的かつ効率的なリード育成と成約を目指すことが特徴です。
ABMと一般的なマーケティングの違い
ABMは特定の企業や顧客に焦点を当て、パーソナライズしたアプローチで長期的な関係構築と成約を目指す戦略に対して、通常のマーケティングは幅広い層に向けたリード獲得が主な目的になります。
ABM(Account Based Marketing)の関連用語
ABM(アカウントベースドマーケティング)を理解する上で、頻繁に耳にする関連用語を5つ紹介します。ABMは特定の重要なアカウントに焦点を当てたマーケティング手法ですが、その実践にはいくつかの専門用語が存在します。これらの用語を知ることで、ABMの仕組みや効果的な実行方法がより深く理解できるでしょう。
キーマンレター
キーマンレターは、ターゲット企業内の意思決定者や影響を持つ重要な人物に対して、カスタマイズされたメッセージや手紙を送る手法です。この方法は、企業の最新動向やニーズに基づき、受け手にとって価値のある情報を提供することを目的としています。特に大企業や上場企業をターゲットにしたABM戦略で効果的です。
インテントデータ
インテントデータとは、顧客のオンライン活動から購買意図や関心を分析するデータのことです。Webサイトの閲覧履歴やソーシャルメディアでの行動などから、潜在顧客の興味を特定し、それに基づいてターゲットアカウントにアプローチします。インテントデータを活用することで、セールスとマーケティングの効率を大幅に向上させることができます。
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Sales Markerは、インテントデータを活用し顧客がどのようなキーワードを検索しているのかをリアルタイムで把握することで、顧客のニーズや購買意欲を捉え、適切なタイミングで提案を行うことが可能です。これにより、無駄なアプローチを減らし、商談化率を大幅に向上させることができます。
Tier(ティア)
Tierは、ターゲットアカウントを重要度や優先度に応じて階層的に分類する概念です。Tier1は最も優先すべきアカウント、Tier2は中程度の重要度、Tier3はそれ以下といった具合に分類され、それぞれの層に対して異なるマーケティング戦略を実行します。これにより、リソースを最適に配分し、重点的なアプローチが可能になります。
BDR(Business Development Representative)
BDRは新規アカウントの開拓を担当する営業職で、ABMにおける最初の接点を担います。担当者はターゲットアカウントにアプローチし、ニーズを掘り下げ、商談のきっかけを作ります。BDRは電話やメール、ソーシャルメディアを通じてターゲットにアプローチし、潜在顧客をリードへと転換する役割を果たします。
データドリブン
データドリブンとは、データに基づいて意思決定や戦略を立てる手法です。直感ではなく、顧客の行動データや市場情報を活用し、精度の高い施策を実行します。ABM(アカウントベースドマーケティング)と非常に相性が良く、ターゲットアカウントに関するデータをもとに、パーソナライズされたアプローチが可能になるため、効果的な成果を得やすいのが特徴です。
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ABM(Account Based Marketing)が注目される背景
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、特定のターゲット企業に焦点を当てた効果的なマーケティング手法として注目されています。
この注目の背景には、マーケティングツールの進化や企業構造の変化、さらには市場環境の変化などが影響しています。ここでは、ABMが注目される3つの主要な背景を紹介します。
1.SFAやCRM、MAといったマーケティングツールの発展
セールスフォースオートメーション(SFA)、顧客関係管理(CRM)、マーケティングオートメーション(MA)といったツールの進化により、顧客の行動データや購買履歴を詳細に把握できるようになりました。これにより、ABMにおけるターゲットアカウントへのパーソナライズされたアプローチが実現しやすくなり、より効果的な施策が可能になっています。
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近年では、AI・技術の発展の影響もありツールの機能が豊富になってきています。自社でどんなツールを活用すれば良いか悩むタイミングも出てくるのではないでしょうか?そこで過去記事では2024年最新版の営業ツール紹介をしていますので参考にお使い下さい。
2.事業部制による機会損失
大企業においては、事業部制が導入されることが多く、複数の部署が同じ顧客にアプローチする際に情報共有が不足することで、商機を逃してしまうことがあります。ABMを導入することで、企業全体で統一したアプローチを取ることができ、顧客との関係強化や成約機会の最大化を図ることが可能です。
3.競争の激化と顧客獲得コストの上昇
市場の競争が激化し、特にBtoBの領域では新規顧客を獲得するためのコストが増加しています。ABMは、既存のリード獲得施策と比較して、特定のアカウントにリソースを集中させるため、効果的にコストを抑えながらターゲットアカウントにリーチできる手法として注目されています。
ABM(Account Based Marketing)導入のメリット
BtoB営業において、特定の企業やアカウントに対して重点的にアプローチするABM(アカウントベースドマーケティング)は、効率的かつ効果的な戦略として注目されています。
ABMの導入により、営業活動全体の精度を高め、リソースを最適に配分することで、より高い成果を得ることが可能です。ここでは、BtoB営業の視点から、ABM導入の3つの具体的なメリットについて解説します。
ROIの向上が期待できる
ABMでは、BtoB営業において最も成約の可能性が高い企業や組織に対して、リソースを集中してアプローチします。
通常のマーケティング手法では、幅広いリード獲得を目的にコストが分散されますが、ABMでは狙いを定めたターゲットにパーソナライズされた施策を行うため、無駄なリードを削減し、より高い投資対効果(ROI)が期待できます。
特に、大規模契約や長期的なパートナーシップが求められるBtoB企業にとって、少ないアカウントで大きな成果を出せる点が大きな魅力です。
PDCAの高速化
BtoB営業では、ターゲットとなる企業や顧客のニーズや動向を迅速に把握し、適切な対応を取ることが求められます。ABMはターゲットアカウントが明確であるため、個別のアプローチ結果をすぐにフィードバックし、評価・改善がしやすくなります。
これにより、アプローチ内容を短期間で見直し、次のアクションに反映できるため、PDCAサイクルを高速で回すことが可能です。迅速な戦略調整が競争優位を確立するカギとなり、特に動きの速い業界や市場においては大きなメリットです。
アプローチシナリオを策定しやすい
BtoB営業では、顧客ごとに異なるニーズや課題を深く理解した上で、個別のソリューションを提案する必要があります。ABMでは、ターゲット企業ごとに詳細なインサイトを集め、それに基づいたパーソナライズされたアプローチシナリオを策定できます。
例えば、特定の業界トレンドに基づいた提案や、過去の購買履歴・課題に応じたソリューションの提供などが可能です。シナリオの明確化により、営業担当者は適切なタイミングで、顧客に最適なメッセージを届けることができ、リード育成から商談化までのプロセスを効率的に進められます。
※パーソナライズとは…パーソナライズとは、企業側がそれぞれのユーザーの属性、趣味嗜好、行動データ履歴といったデータにあわせて情報提供することを指します。
ABM(Account Based Marketing)導入のデメリット
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、ターゲット企業に対する集中アプローチが効果的な戦略ですが、導入にはいくつかのデメリットや注意点も存在します。
ABMを成功させるためには、これらの課題を理解し、事前に対策を講じることが重要です。次に、ABM導入時に考慮すべきデメリットと留意点を3つ紹介します。
コストとリソースの負担を検討する
ABMは、特定のアカウントに対して個別対応するため、通常のマーケティングよりも多くのコストとリソースが必要です。特に、カスタマイズされたコンテンツやシナリオの作成、データ分析に工数がかかり、リソースの不足が課題となる可能性があります。
結果が出るまで時間がかかる
ABMは長期的な関係構築を目的としているため、成果が出るまでに時間がかかる場合があります。即効性を求める場合には不向きであり、短期的な営業目標を達成するためには他の施策との併用が必要です。
ターゲットの選定ミスのリスク
ABMでは、ターゲットとなるアカウントの選定が極めて重要です。不適切なターゲットを選んでしまうと、リソースが無駄になり、成果に結びつかない可能性があります。綿密なデータ分析と戦略的な選定が欠かせません。
ABM(Account Based Marketing)実践の手順
ABM(アカウントベースドマーケティング)を成功させるためには、明確なステップに基づいて実行することが重要です。ここでは、ABMを実践する際の主な手順を5つ紹介します。
【手順①】ターゲットリストの作成
ABMの基本となるのが、ターゲット企業のリスト作成です。この手順では、企業のビジネス目標に沿ってアカウントを選定します。新規顧客獲得が目的であれば、同業種や関連業界の企業をピックアップし、リスト化します。ターゲット企業の特性やニーズを把握し、より具体的な施策を立案するための基盤を作ります。
また、ターゲット選定の際には、営業チームとマーケティングチームが連携して、業界特有の課題や競合の動向を共有し、適切なターゲットリストを作成することが重要です。
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ターゲットリストを作成する際のターゲティングの方法を知りたい方はこちらの記事を参考にして下さい。
【手順②】ターゲット企業のニーズや課題の把握
ターゲット企業のリストができたら、次はそれぞれの企業のニーズや課題を把握することが必要です。ターゲット企業がどのような問題を抱えているのか、どのような製品やサービスが顧客の課題解決につながるかを深く理解します。業界レポートやオンライン調査、既存のデータベースを活用して情報を集め、ターゲット企業の状況を詳細に分析します。
営業担当者からのフィードバックや既存顧客のインサイトも非常に役立つため、これらを積極的に取り入れると、より実践的な情報を得ることができます。
【SalesMarkerに問い合わせのある企業が抱える課題例】
【手順③】カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップは、ターゲット企業が購買に至るプロセスを可視化するための重要なツールです。ターゲット企業が意思決定をする過程で、どのような情報を必要としているか、誰が意思決定に関与しているかを明確にします。
例えば、購買プロセスの初期段階では、CIOやIT部門が技術要件に注目する場合があります。一方、契約段階では、法務や財務部門が主要な関与者となるため、それぞれの段階で必要な情報を提供できるようなシナリオを策定することがポイントです。
【手順④】コンテンツ作成とアプローチ方法の検討
ABMでは、ターゲット企業ごとに最適化されたコンテンツを提供することが成功の鍵です。ターゲット企業の業界特有の課題やニーズを基に、個別にカスタマイズされたコンテンツを作成し、彼らに最も響くメッセージを届けます。
コンテンツの形式も重要で、例えばホワイトペーパーやウェビナー、ケーススタディなど、ターゲット企業が価値を感じる情報を選びます。また、どのチャネルでアプローチするかも検討が必要です。SNS、メール、あるいは直接の電話など、ターゲットが利用しているチャネルに合わせて戦略を立てます。
【手順⑤】アプローチの実践とPDCAサイクルの回転
ABMのアプローチを実践した後は、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回し、結果を検証しながら改善を繰り返します。ターゲット企業ごとのアプローチ内容や結果を定期的に評価し、成功した点や改善が必要な部分を分析します。
具体的には、計画(Plan)ではターゲットごとのアプローチ内容を決定し、実行(Do)ではその計画に沿って実施します。次に、評価(Check)フェーズでは、KPIに基づいて結果を分析し、効果測定を行います。そして、改善(Action)フェーズで、得られたデータをもとに次のアプローチを最適化します。これにより、アプローチの精度が高まり、より効果的な結果が期待できます。
ABM(Account Based Marketing)を成功させるポイント
【ABM(Account Based Marketing)導入時のNG項目】
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、効果的な営業・マーケティング手法ですが、成功させるためにはいくつかの重要なポイントがあります。
特に、BtoB企業では、リソースを集中させたターゲティングや、顧客との深い関係構築が求められます。ここでは、ABMを成功に導くための3つのポイントを紹介します。
1.ターゲットアカウントの精緻な選定
ABMでは、ターゲットアカウントの選定が最も重要な手順です。ビジネスに最も影響を与える企業をリストアップし、リードの質を高めることで、リソースを最大限に活用できます。多くの企業が広範なアプローチを取ってしまうことがありますが、絞り込んだアプローチの方が成果につながりやすいです。
2.部門間の連携強化
営業、マーケティング、カスタマーサポートなどの部門が連携して動くことが、ABMの成功には不可欠です。部門ごとに異なる戦略ではなく、統一したメッセージやアプローチを共有することで、ターゲット企業に一貫した印象を与えられます。特に、営業とマーケティングの協力は、パイプラインの成果を左右します。
3.パーソナライズされたアプローチの徹底
ターゲットアカウントごとにパーソナライズされたメッセージやコンテンツを用意することが鍵です。各企業が抱える課題やニーズに応じた提案を行うことで、より深い信頼関係を構築できます。多くの企業が一律の提案をしがちですが、ABMでは個別対応が成約に大きく影響します。
本記事のまとめ
近年注目を集めるABM(アカウントベースドマーケティング)は、自社にとって価値の高い特定の企業(アカウント)を選び、その企業に向けて個別最適化されたマーケティング戦略を展開する手法です。
従来のLBM(リードベースドマーケティング)では、大量の見込み客に対して一律のアプローチが行われるため、特定企業のニーズを的確に捉えることが難しかった一方で、ABMはターゲットの課題やニーズに合わせてアプローチをカスタマイズできるのが強みです。
さらに、ABMは営業とマーケティングの連携を強化し、ターゲット企業との信頼関係を構築しやすくします。迅速に成果を検証し、サイクルを回していくことがビジネス成長の基盤を築くために重要な手順となるでしょう。